夜の哲学 バタイユから生の深淵へ

酒井健 著

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夜の哲学 バタイユから生の深淵へ

定価本体3200円+税

発売日2016年9月21日

ISBN978-4-7917-6947-6

サド、ニーチェ、ブランショ、ラカン、岡本太郎、そして――バタイユ
過剰なものや不可視なものを忌避して、人は社会を築いてきた。しかし、そうやって捨ててきた異様なもののなかにこそ哲学の根源がある。物質にあふれ、既存の道徳に守られ、確かな実体や輝かしい未来にばかり心をくだく現代に、究極的に欠けているもの。見えない闇の奥にこそ生の根源があると信じ探求しつづける、思想家の到達点。

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【目次】

まえがき

 

第Ⅰ部 生と死の夜
 

第1章 私たちが死んでいくこの世界
被災地へ/バタイユのブランショ論/『最後の人』/二つの倫理/生の世界を根底から捉え直す

第2章 悲劇を笑えるか――ニーチェとバタイユの笑い
『善悪の彼岸』を借り出すバタイユ/笑いと棄教/悲劇との出会い/性の世界へ/バタイユを導くニーチェ/「逆説的な哲学」/フランスのニーチェ受容と『力への意志』/ニーチェの思想に帰結を与える/善悪の此岸への批判/第二次世界大戦後の社会と道徳/悲劇的な人物たちを笑う/重たい笑いから軽やかな笑いへ/アタラクシア(魂の平静)/軽さの美学/被災者とともに

第3章 ヒロシマの人々のあとで
生き続けるヒロシマ/バタイユのヒロシマ論/新たな視点の必要性/ハーシーの『ヒロシマ』/谷本氏の体験/動物的世界観/『いのちの初夜』/瞬間を窓口にして/むなしさの実感/二つの道徳

第4章 ヒロシマの動物的記憶
絶えることのない「物語」への執着/『ヒロシマの人々の物語』/人間は延命を欲する/曖昧な感性から至高の感性へ/イエスとヒロシマの人々/夜の輝き/記憶を表現する/「不随意的な思考」と夜の可能性



第Ⅱ部 聖なる夜
 

第1章 最期のイエスの叫びとジョルジュ・バタイユの刑苦――『内的体験』の一断章をめぐって
はじめに/十字架の聖ヨハネ/瞑想/非‐知/パウロと十字架の神学/神の直接的介入/結びに代えて――好運の方へ

第2章 銀河からカオスへ向かう思想――後期ニーチェへの新たな視角のために
内部の宇宙/ニーチェの疑い/多数の霊魂の共同体/未発達の主語/誰を「見よ」と言っているのか

第3章 ワイン一杯とバタイユの「無」のエコノミー――ニヒリズムへの批判に向けて
サルトルの批判/バタイユの応答/ニヒリズムの視点から/一杯のワイン/自己意識/ニヒリズムの現在のなかで

第4章 聖なるものの行方
はじめに/有形の共同体/「好運」がインパクトを放つとき/引き裂かれた神人同形説/戦闘のイデオロギー/夜の流れに消えていく黒い髪/地上に夜の太陽をもたらす/今なお「悲劇の帝国」を



第Ⅲ部 夜とバタイユの隣人たち
 

第1章 他者の帳が破られるとき――バタイユとラカン
バタイユとラカン/無意識と意識の総合/シュルレアリスムに対する態度の違い/不可能なものの可能性

第2章 幽閉の美学――サドと修道院
はじめに/変換者/森の奥底で/自然の気まぐれ/サドの恐怖/石の壁/新たな中世史の地平へ

第3章 夜の歌麿――ブランショ、バタイユ、キニャールから
アメリカ人が見た春画/日本の近代化/ブランショと二つの夜/歌麿の眼差し/バタイユからキニャールへ/江戸に近づく西欧

第4章 日本人の継承 三島由紀夫と岡本太郎――歴史性と演劇性
はじめに――バタイユと演劇性/一九七〇年の大阪万博から一九三〇年代のフランスへ/イヌクシュクと大ウタキ/三島由紀夫と空無の体験/一九七〇年一一月二五日の両極性/結びに代えて

第5章 神々の到来と創造的ニヒリズム――ナンシーとともに
はじめに――現代のニヒリズム/効率のいい「無」/ナンシーのニヒリズム/無為の共同体/一九六八年のニーチェ論/ニーチェのニヒリズム/創造的ニヒリズムの道へ/再び無為の共同体について/共同体の不在/終わりに――「不在」から「中断」へ

 

あとがき
索引

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[著者] 酒井健(さかい・たけし)

1954年、東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、同大学大学院へ進学。パリ大学でジョルジュ・バタイユ論により博士号取得。現在、法政大学文学部教授。2000年に『ゴシックとは何か』でサントリー学芸賞受賞。そのほかの著書に『バタイユ そのパトスとタナトス』(現代思潮新社)、『バタイユ入門』(ちくま新書)、『バタイユ 聖性の探究者』(人文書院)、『バタイユ 魅惑する思想』(白水社)、『バタイユ』(青土社)、『シュルレアリスム 終りなき革命』(中公新書)、『「魂」の思想史 近代の異端者とともに』(筑摩選書)など。バタイユの邦訳に『純然たる幸福』、『ランスの大聖堂』、『エロティシズム』、『ニーチェ覚書』(いずれも、ちくま学芸文庫)、『ヒロシマの人々の物語』、『魔法使いの弟子』(いずれも、景文館書店)など。