ケルトの想像力

-歴史・神話・芸術-

鶴岡真弓 著

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ケルトの想像力

定価3,960円(本体3,600円)

発売日2018年2月23日

ISBN978-4-7917-7029-8

歴史、神話、芸術、英雄、女神、季節祭、コミック…魂のリヴァイヴァルまで。
ヨーロッパの「古層文化」を築き、現代まで息づいて、異質なもの同士を融合させ、少数の力で世界を魅了し躍動させてきたケルトの強力な「親和力としての想像力」。
その螺旋的循環の生命観に圧倒されない者はいない。「ケルト」の「歴史・神話・芸術」の3本の柱をとおして、【「ヨーロッパ」を根源から読み直す】ための画期的な論考とヴィジュアルの書。
大陸「ガリア」の先史から、揺れる現在のEU問題までをみつめ、教科書に書かれてこなかった西洋史・世界史の深淵を、ケルトから読み解く10章で展開。
ローマと闘ったガリアの【歴史】。大陸から島までを貫くアーサー王などの英雄・女神妖精たちの【神話・伝説】。ドルイドと巨石モニュメントの【宗教】。神秘の装飾に満ちる世界の美書『ケルズの書』の【美術】
ハロウィーンの起源から始まる【季節祭】暦の自然信仰の由来。そして現代ではフランスの国民的コミック『アステリクス』の人気の秘密。トールキンを魅了した【ドラゴンクエスト】のリヴァイヴァル。ケルト系子孫のモリスやフランク・ロイドライトの【デザイン】から、現代ケルト【映画・音楽・ダンス】まで――。豊富な図版、写真とともに、読み切りの多彩なコラムの数々が、読者を旅へも誘う。
汲めども尽きぬ「想像と創造の源泉」に、第一人者が挑む。書かれなかった「ケルトの全貌」がここにある。

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【目次】

はじめに
親和力としてのケルトの想像力――ケルトで目覚めるヨーロッパ
 

序章 ヨーロッパの根源を問い直す――ケルト文明とはなにか
ローマより古い、ヨーロッパの基層「ケルト文明」
 

第1章 『ガリア戦記』を越えて――古代フランスのケルト
1.終わらない『ガリア戦記』――文明の衝突
2.「EU結束」とヴェネツィアの「ケルト展」――最初のヨーロッパ
3.「ガロ=ローマ時代」のフランスの再発見
4.アステリクス・コンプレクス――フランスの国民マンガの戦い
 

第2章 ケルトの自然信仰――暦の知恵
1.心に灯す再生の光――ケルトの冬至とクリスマス
2.ケルトの四つの季節――「冬=闇=死」からの再生
3.アイルランド「万霊節」の「火と陽」――ハロウィンの起源
◎ オガム文字の力
 

第3章 動物という神々――生きとし生けるものの精霊
1.ケルトの動物信仰と超自然
2.ドラゴンと蛇――『ロード・オブ・ザ・リング』から日本の金印蛇紐まで
3.ケルトの動物文様と装飾主義
◎ 霊魂不滅の死生観
 

第4章 語りつがれてきた「ドルイド」――古代ギリシアから近代の「高貴なる野蛮人」まで
1.ドルイド・イメージの歴史
2.「ドルイド」はなぜ生まれ変わるのか――「高貴なる野蛮人」と呼ばれた賢者
3.「タリアセン」は二度蘇える――F・R・ライトと二つの「N」
◎ 冬至の太陽と巨石と十字架――アイルランドの巨石文化
◎ 妖精の復活とアイルランド
 

第5章 英雄と剣の生命循環――神話・伝説の深層
1.アーサー王伝説「石から抜かれた剣」――ケルト神話が結ぶインド=ヨーロッパの観念
2.インド=ヨーロッパ文明と錬金術――剣・コイン・黄金
3.『ベーオウルフ』と怪物――トールキンと北方世界
◎ ケルトの神話・伝説へのいざない――「ケルト」の読み方
 

第6章 『ケルズの書』とケルト修道院――装飾と霊性のミクロコスモス
1.『ケルズの書』とケルト装飾美術
2.ケルト、サクソン、ローマ、ビザンティンを結ぶ――『リンディスファーン福音書』
3.リンディスファーン島幻想――マッキントッシュの線と北方の美学
4.スイスの湖とケルト社会の宗教
◎ 書体と時間――ハーフ・アンシャル体の美
 

第7章 ケルト文化圏伝統 旅・音楽・映画・デザイン
1.アイルランド
1-1.「文明の宝島」アイルランド――「西の極み」への旅
1-2.溺死者とイグザイル――アイルランドという表象の在処
1-3.「アヌーナ」とスピリチュアリズム
1-4.「アラン島」と芸術家の視力
1-5.アラン島とウィスキー
1-◎ ジェイムス・ジョイスに宿る”Becoming”の想像力
1-◎ チーフタンズ福岡公演――異なるものの共振

2.スコットランド
2-1.グラスゴー――黒いダイヤモンドとクライドサイドの生き方
2-◎ 海豹伝説――「復興の画家」ダンカンからアニメ『海のうた』へ

3.ウェールズ
3-1.タリアセンの蘇生力――フランク・ロイド・ライトとウェールズ詩人の絆
3-2.ウィリアム・モリス 「ユートピア思想の逆説」

4.コンウォール
4-1.『トリスタンとイゾルデ』の妙薬――癒される死
4-◎. 聖なるミカエルの巌――海に浮かぶ三つの山

5.マン島
5-1.ケルト復興のデザイナー、A・ノックスの故郷――マン島とリバティ様式
5-◎. マン島の「三脚巴」と『ケルズの書』の「三人巴」文様

6.ブルターニュ
6-1.ブルターニュ伝統文化のコード――海に臨む半島の先史から現代まで
6-2.地域=民族主義――ブルターニュの修道院で
6-3.海と「イスの町の伝説」
 

第8章 ケルト・リヴァイヴァル――「北方」の発見
ケルト、長き黄昏の後に――「オシアン」の古歌復活


終章 国民国家の表象
「ガリア」と「ヒベルニア――ケルト文化とパトリオティズムの表象

 

あとがきに代えて

参考文献・資料

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[著者] 鶴岡真弓(つるおか・まゆみ)

ケルト芸術文化史家およびユーロ=アジア生命表象研究家。早稲田大学大学院修了。ダブリン大学トリニティ・カレッジに留学。現在、多摩美術大学・芸術人類学研究所長/芸術学科教授。日本ケルト協会顧問。東京自由大学顧問。
主な著書に『ケルト/ 装飾的思考』、『ケルト美術』、『ケルト 再生の思想』、『装飾する魂』、『ケルトの歴史』(共著)、『阿修羅のジュエリー』ほか多数。主な訳書にシャーキー『ミステリアス・ケルト』、ピゴット『ケルトの賢者「ドルイド」』、ミーハン『ケルズの書』ほか多数。ドキュメンタリー映画『地球交響曲第一番』でアイルランドの歌姫エンヤと共演。