隔たりと政治

-統治と連帯の思想-

重田園江 著

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隔たりと政治

定価3,080円(本体2,800円)

発売日2018年11月22日

ISBN978-4-7917-7117-2

人間は孤独だが、ひとりきりでは生きていけない。
自分とは境遇の違う人と共に生きるにはどうすればいいのか。遠くにいる人とつながることなどできるのだろうか。すぐそこにある隔たりから、政治思想の問いは出発する――。規律社会の統治のテクノロジーを鋭く読み解きながら、紛争や暴力を治め、分断に抗う連帯の可能性を構想する試み。

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【目次】

はじめに

Ⅰ 隔たりと統治

第Ⅰ部について

第一章 監視と処罰の変貌
はじめに/監視と処罰の断絶という様相/ゼロ・トレランスと割れ窓理論/割れ窓理論とコミュニティパトロール/環境犯罪学と犯罪の「機会性」/厳罰化と被害者重視の犯罪政策/おわりに

第二章 リスクを細分化する社会
はじめに/社会的リスク/社会に固有のリアリティ/多様化した社会における連帯/社会保険制度の理念/ゴルドンと多様性の統計学/リスクを細分化する社会/リベラルな保険制度における「個人」

第三章 市場化する統治と市場に抗する統治
はじめに/現在の位置/自由主義への不信/フーコーの統治性論/ポランニーの市場社会論/おわりに

第四章 大学改革における統治性――官僚制と市場のレトリックをめぐって
はじめに/大学改革における「経済の論理」/これは大学の「ネオリベ」改革なのか/「市場の論理」とはなにか/大学間競争/規律と専制/責任の不在――ポスドクの就職難と法科大学院/失敗した改革――天下り不祥事とネイチャーによる国際評価/おわりに

第五章 政治と行政について――「官邸」と「官僚」
はじめに/官僚の不祥事/「政治主導」の弊害/「政治」と「行政」/法学における「政治」の場/執政権力と官僚

 

Ⅱ 隔たりと連帯

第Ⅱ部について

第六章 「隔たり」について

第七章 なぜ社会保険に入らなくてはいけないの?
誰でも損はしたくない/社会保険は損得の問題なの?/働く場での相互扶助の起源――コンフレリィ/労災の責任は誰に?/個人の選択の自由とは?

第八章 協同組合というプロジェクト
協同組合の歴史についての思い込み/新自由主義的な語りの起源/新自由主義における個人と消費/一九世紀前半の産業世界の無秩序/協同組合という組織化への試み/会社か協同組合か

第九章 現代社会における排除と分断
戦後日本における思想史研究の役割分担/文化へのシフトと政治思想/八〇年代以降の社会批判の諸言説/新自由主義の統治――排除対包摂/現在――分断対連帯/連帯のイメージ――「異なるもの」と「同士」/政治思想の未来

第一〇章 連帯の哲学
切り裂かれた無知のヴェール?/社会連帯思想/ロールズの『正義論』/社会的な視点と連帯

 

Ⅲ 隔たりと政治

第Ⅲ部について

第一一章 ナウシカとニヒリズム

第一二章 暴力・テロル・情念――『革命について』に見る近代
情念の近代/「同情‐憐れみ」の政治/絶対の善とテロルの嵐/映画『タクシードライバー』/現代思想が向かうべき問い

第一三章 なぜ政治思想を研究するのか
なぜにいまさら読んでいるの?/考える葦って誰のこと?/イエスとロベスピエールのあいだ?/政治思想を研究するとは?

第一四章 天空の城、リヴァイアサン

第一五章 『リヴァイアサン』の想像力

 

ブックガイド
おわりに
索引

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[著者] 重田園江(おもた・そのえ)

1968年兵庫県西宮市生まれ。早稲田大学政治経済学部、日本開発銀行を経て、東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。現在、明治大学政治経済学部教授。専門は、現代思想・政治思想史。著書に、『フーコーの穴――統計学と統治の現在』(木鐸社)、『ミシェル・フーコー――近代を裏から読む』『社会契約論――ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ』(ちくま新書)、『連帯の哲学I――フランス社会連帯主義』『統治の抗争史――フーコー講義1978-1979』(勁草書房)など。