陶酔映像論

伊藤俊治 著

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陶酔映像論

定価2,860円(本体2,600円)

発売日2020年6月6日

ISBN978-4-7917-7281-0

映像という闇の中の光芒に、忘れがたい陶酔の記憶を探る。
日常の制約から解放されたエクスタシー・忘我にあっては、理知的であるよりも、事物の核心が直截・明快に見えているのではないか。映画の未来をゴダールは生き、リーフェンシュタールは肉体の美と生命力を謡い、抑圧された性の解放を戦うクローネンバーグ。さらに精霊と死者の世界に彷徨うアピチャッポン、小津安二郎サイレントの究極の大胆さ――。エクスタシー体験が、底知れぬ真実の深みを垣間見せる。全く斬新で画期的な映像・認識論。

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[目次]

はじめに

❶ 来たるべき映像のために/絵画・写真・映画
―――――
映画の未来の陶酔のために――ジャン=リュック・ゴダール「イメージの本」
逃げ去る映画/新しい記憶――ジャン=リュック・ゴダール「勝手に逃げろ/人生」
光と瞬間の奇跡――ピクチャーからモーションピクチャーへ

❷ 聖性を呼ぶ
―――――
オリンピアの身体――レニ・リーフェンシュタールの映像身体
身体、影の詰まった袋――ルイス・ブニュエル「忘れられた人々」を呼びさます
肉体の抑圧と再帰する性の欲望――デイヴィッド・クローネンバーグ論

❸ 愛するエスノグラフィ
―――――
陶酔する映像――マヤ・デーレン「神聖騎士」を中心に
感覚民族誌と世界霊――ハーバード大学感覚民族誌学研究所『リヴァイアサン』から『カニバ』ㇸ
シネトランスの彼方へ――ジャン・ルーシュの憑依儀礼映像を中心に 

❹ 転生する記憶
―――――
転生と精霊の徴――アピチャッポン・ウィーラセタクンの映像芸術
イメージの山へ――フィオナ・タン「アセント」
旋回する想起――ビル・ビオラの踊る知覚映像

❺ 陶酔のドキュマン
―――――
夜汽車のメタモルフォーゼ――一九三〇年代の小津安二郎
サイレント・デスマスク――「非常線の女」における小津安二郎の写真/映画
閃光/記憶と忘却――オッペンハイマー「アクト・オブ・キリング」から「ルック・オブ・サイレンス」ㇸ
〝陶酔の真実〟を求めて――ヴェルナー・ヘルツォークの不思議な旅

終わりに

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[著者]伊藤俊治 (いとう・としはる )

1953年生まれ。美術史家。東京藝術大学美術学部先端芸術表現学科教授。著者に、『ジオラマ論』『20世紀写真史』『20世紀エロス』『愛の衣裳』『バリ島芸術をつくった男――ヴァルター・シュピースの魔術的人生』『電子美術論』ほか多数。