蛇神をめぐる伝承

-古代人の心を読む-

佐佐木隆 著

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蛇神をめぐる伝承

定価1,980円(本体1,800円)

発売日2020年9月19日

ISBN978-4-7917-7310-7

神が神でなくなるとはどういうことか
その怪異な姿と独特の習性のゆえに、古代の人々が「神」と恐れあがめた蛇。ときに人間の女性と結婚し、ときに人びとにいけにえを求め、ときに刀剣・雷として現れ、そして、ときに見た者の一族を滅ぼす力をもつものと考えられてきた。上代・中古の文献を広く渉猟し、「蛇」にまつわる逸話を仔細に分析することで、そうした「をろち」の圧倒的な霊威がなぜ失われてしまったのかという謎にせまる。

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[目次]

まえがき


序 章 毒気を吐いて人間を殺す蛇神
蛇を怖がる男の話/蛇に具わる怪異性/「夜刀の神」と呼ばれた蛇/蛇と刀剣のつながり/蛇に対する呼び名

第一章 美男に変身して女に近づく蛇神
蛇体をもつ三輪山の神/「丹塗矢伝説」の蛇神/登場者に与えられた名/代表的な「三輪山伝説」の蛇神/神の祭祀と祟りの解消/B1・B2二話の内容的な類似/蛇神の変身


第二章 四つめの「三輪山説話」と蛇神
「箸墓伝説」に登場する妻/C・D二話の内容・展開/神の怒りと妻の死/二話の間の相違点/蛇神の姿を見た女


第三章 刀剣でもあり雷神でもある蛇神
イメージの重なり/小刀を象徴する小蛇/急に成長する子/天に昇ろうとする子/蛇と一緒に生まれた子


第四章 「三輪山伝説」の影響と蛇神・雷神
「鏡の渡」の男女/人身蛇頭の男/「鏡」という道具/切れた鏡の紐・振った褶・衣に付けた紐/死者をも蘇らせる「褶」/伊福部の雷神/鳥による導き/大物主神の話とGの話


第五章 皇子を執拗に追いかける蛇女
垂仁天皇の話の後半部/物が言えない皇子/出雲での御子/父子と蛇の関わり/引用された諺の意味/「垂仁記」の構成


第六章 人間に制圧され排除される蛇神
「夜刀の神」の制圧/その後の「夜刀の神」/「虬」を退治された話/大蛇に変身した山の神


第七章 英雄に退治される「八俣の大蛇」
「八俣の大蛇」とは/大蛇の退治と大刀の発見/「垣」に具わる呪力/登場者の名/蛇神をめぐる伝承の圧巻


第八章 連想を呼ぶ「陰突き」と蛇神
「陰突き」という話題/別の「陰突き」/まだある「陰突き」/「陰絶田伝説」に見える「陰突き」/号物の血と植物の生長/「陰突き」の際の動き/「陰突き」と女の死/同じ話題のくり返し/似た話題を連想すること/韻文と散文に共通する現象


終 章 神性・霊威を失っていく蛇神たち
奈良時代の末の蛇伝承/蛇が女を犯す話/奇妙な後日談/蛇に変身した観音/日蔵の師と多くの大蛇/姿を現した鬼神/相撲と蛇の力比べ/蛇神から仏へ


あとがき

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[著者]佐佐木隆(ささき・たかし)

1950年生まれ。学習院大学教授。学習院大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得。東洋大学専任講師、同大学助教授、学習院大学助教授を経て、現職。著書に『万葉歌を解読する』(NHK出版、2004)、『日本の神話・伝説を読む』(岩波新書、2007)、『上代の韻文と散文』(おうふう、2009)、『言霊とは何か古代日本人の信仰を読み解く』(中央公論新社、2013)、『上代日本語構文史論考』(おうふう、2016)など。