あしたの南極学

-極地観測から考える人類と自然の未来-

神沼克伊 著

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あしたの南極学

定価2,420円(本体2,200円)

発売日2020年9月24日

ISBN978-4-7917-7312-1

たいせつなことはすべて南極が教えてくれる――
はじめて人類が足を踏み入れてから100年以上、いまなお南極では観測と発見が続いている。自然の美しさと荘厳さ、越冬生活のなかでの人間関係、観測によって得られた科学的知見……。極地だからこそ学ぶことのできる教訓は、実はわたしたちの未来にとって重要なことばかりなのだ。南極で二度越冬した著者が、自身の経験から描きだす南極のすべて。

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[目次]

はじめに

第1章 南極観測事始め
宗谷 ふじ しらせ しらせの 観測船/科学五輪 熱気で国中 湧きかえる/観測へ こづかい節約 義援金/海氷に 奇跡を起こした 宗谷の運/地の果てに 初めてあがった 日章旗/国民の 熱気が創った 昭和基地/条約で 領土侵犯 せずに済み/南極は ビザなし渡航の パラダイス/君のような 人が出てきて 嬉しいよ

第2章 昭和基地
天測点 地図の原点 まず決める/トビひとり すべての建物 素人で/俺は医者 何で労働 させるのか/学者 医者 ジャーナリストも 労働者/管理棟 変な名前に 違和感を/昭和基地 できないものは 作り出せ/1次隊 苦労偲ばず 石室の跡/冷凍庫 食生活が 大変化/家よりも はるか豪華と 囲む食卓/隊員の 安全見守る 福島ケルン/また俺を 置いて行くのか と腕を曳き/現れた 犬の死骸に 涙する/床暖房 今は昔の 布団の霜/一文字の 電報懐かし 昭和基地/ファックスも メールも届く 昭和基地/昭和基地 トイレの変遷 進歩知る/自分の仕事と 他人の仕事を 比べるな/還暦過ぎ 初めて経験 病人帰国

第3章 観測・調査
南極観測 まだやっているのと 議員さん/南極の 四つの極を 理解する/昭和基地 オーロラ帯の下で 成果上げ/日中に オーロラ出ていると 大騒ぎ/ブリザード 気象忙し 我休み/平均の 気温が出るまで 三〇年/無いはずの 地震を観測 合点する/定常の 観測続け 大成果/ブルーアイス 黒いものが 隕石だった/でも出ない 天地創造の 大成果/南極の 観測・調査で 満足し/何故調べない 目の前にある 変動現象/掘削で 環境変化 解明す/昭和基地 いつの間にやら 後を追い

第4章 自然
寒くても 四季を感ずる 昭和基地/極夜よし 白夜の説明 できぬ隊員/丁度よい 日の出と錯覚 一〇時の目覚め/秋の雪 踏み跡だけが 白くなり/大騒ぎ 転がる太陽 写すため/太陽が 上下に動く 越冬明け/海氷に 氷山 オーロラ 冴えわたる/雪原に 昇る満月 オーロラも/海氷の ペンギンの列 春近し/アザラシが 泳ぎ教える 開水面/氷融け トウカモの水浴び かもめ池/日照で 岩のくぼみに 水溜まり/陽光が 育む流れ 大陸斜面/ブリザード 一〇メートルも 無限の遠さ/雪上車 ホワイトアウトで 迷走す/気が付けば クレバスだらけで 足すくむ/海氷割れ 沈む雪上車 カメラ浮く/快晴で テントを揺らす カタバ風/環境保護 持ち込んだものは 持ち帰り

第5章 生活
選ばれた 男冥利の 観測隊/南極で 偉くなったと 錯覚し/初の女子 年寄ばかりが 大騒ぎ/女子越冬 大変なのは 男たち/やはり出た 週刊誌上に スキャンダル/休日に 島を巡って 地理覚え/潮騒に 孤島感じる 昭和基地/海氷上 島かと錯覚 氷山の群れ/割れないと 信じても怖い 海峡の氷/雨漏りに 大騒ぎした 昭和基地/一日の サイクル大事 極夜の日/忙しい 連発する人 余裕あり/いろいろと 理由をつけて ごちそうを/各基地と メール交換 真冬祭/氷点下 火災に弱い 南極の基地/雪原も 注視をすれば 峰と谷/雪面の 小さな突起が 畝作り/雪上車 ドアを開けたら 雪の壁/海氷上 そよ風急変 ブリザード/ブルーアイス エッジも効かぬ 大陸斜面/氷山の 流しソーメンで 春を知る/好天に 身体が動く 南極の春/念願の 布団が干せた 初夏の基地/檜風呂 サウナも楽しむ 昭和基地/酒の量 金では決めず 意志で決め/昭和基地 気が付いたら 自分の家/ゴミ出さぬ 精神で生まれた 「悪魔のおにぎり」/『復活の日』 思い出させた コロナウイルス

第6章 外国基地
南極点 世界一周 本当か/南極点 日の出 日の入り いつも北/荒涼の 中に突然 枯山水/砂 小石 砂浜と錯覚 ドライバレー/砂の上 いまだ手付かず ヘリの残骸/南極石 出たり消えたり ドンファン池/寺社は無し 教会はある 南極の基地/十字架と 原子炉のあと 観測の丘/かんらん岩 ここでは容易に 入手でき/築百年 観光資源で 再評価/氷縁に 集うペンギン 鯨 シャチ/氷壁の ペンギン襲う ヒョウアザラシ/ロス・しらせ 残る業績 地名にて/富士山と 並び賞賛 エレバス火山/南米や 東洋 西洋 入り乱れる南極半島/恐竜に 巨大ペンギン 石炭も/遭難の現場行きたし 代表として/ボート着く ごった返しの 郵便局/今日も出た 低温示す 蜃気楼/麻薬犬 南極便でも 活躍し

第7章 あしたの南極学
日本は 国策必要 南極大陸/昭和基地 観測継続 人類へ貢献/欠かせない 地球冷源の モニタリング/棚氷融け 海面上昇と 大騒ぎ/守り続けて欲しい 南極の地下資源/資源は使わず でも備えて欲しい 国際社会への対応/食料の 資源豊富な 南極の海/南極を 青少年の 訓練の場に/守りたい でも見せたい 南極の大自然/もうやめて 南極大陸内の 冒険旅行/南極に いながらできる 世界一周/南極で オーロラ観光 期待せず/南極は 世界平和の 象徴地域/宇宙での 訓練の場 昭和基地

第8章 そして得られたもの
自然は大きい 人間は及ばない/人間は 自然の中で 生かされている/自然は大きく 人間は小さい 己は小さく 南極は大きい/昭和基地は極楽 南極は極楽 いまも極楽

あとがき

参考文献

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[著者]神沼克伊(かみぬま・かつただ)

1937年神奈川県生まれ。固体地球物理学が専門。国立極地研究所ならびに総合研究大学院大学名誉教授。東京大学大学院理学研究科修了(理学博士)後に東京大学地震研究所に入所し、地震や火山噴火予知の研究に携わる。1966年の第八次南極観測隊に参加。1974年より国立極地研究所に移り、南極研究に携わる。2度の越冬を含め南極へは15回赴く。南極には「カミヌマ」の名前がついた地名が2箇所ある。著書に『南極情報101』(岩波ジュニア新書、1983)、『南極の現場から』(新潮選書、1985)、『地球のなかをのぞく』(講談社現代新書、1988)、『極域科学への招待』(新潮選書、1996)、『地震学者の個人的な地震対策』(三五館、1999)、『地震の教室』(古今書院、2003)、『地球環境を映す鏡 南極の科学』(講談社ブルーバックス、2009)、『みんなが知りたい南極・北極の疑問50』(ソフトバンククリエイティブ、2010)、『次の超巨大地震はどこか?』(ソフトバンククリエイティブ、2011)、『次の首都圏巨大地震を読み解く M9シンドロームのクスリとは?』(三五館、2013)、『白い大陸への挑戦 日本南極観測隊の60年』(現代書館、2015)、『南極の火山エレバスに魅せられて』(現代書館、2019)、『あしたの地震学』(青土社、2020)など多数。