ユリイカ2020年12月号 特集=偽書の世界

-ディオニュシオス文書、ヴォイニッチ写本から神代文字、椿井文書まで-

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ユリイカ2020年12月号 特集=偽書の世界

定価2,090円(本体1,900円)

発売日2020年11月27日

ISBN978-4-7917-0394-4

古今東西、書物あるところに偽書あり
古代、中世、近代、歴史の間に間に、偽書は突如現われる。発見され、執筆され、拡散される。それはパッチワークなのか、アンソロジーなのか、カノンとされたものが偽書となるとき、変容するのは歴史か解釈か。『椿井文書』(中公新書)が広く読まれるいま、問い返す。

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【目次】

特集*偽書の世界――ディオニュシオス文書、ヴォイニッチ写本から神代文字、椿井文書まで

 

❖対談
文書をめぐる冒険――古文書・偽文書・公文書 / 馬部隆弘 小澤 実

❖偽書の時代
偽書跳梁の八年間――安倍政権がとりもどそうとした「日本」 / 原田 実
歴史学界と偽書――『甲陽軍鑑』を事例に / 呉座勇一

❖文献学より始まる
偽書と引用/偽書と憑依――漢文仏典、中世日本の「宗教」文献の中で / 彌永信美
予言を読む――中世日本の未来はいかに訪れたか・〈聖徳太子未来記〉を中心に / 小峯和明
秘伝の行く末――歌学秘伝における思想の伝播と権威のメカニクス / 梅田 径
「炎上」する江戸の言説空間――宣長・秋成と藤貞幹の「偽書」 / 一戸 渉
神代文字の時空間――古代への幻想と国粋主義者たち / 吉田 唯

❖〈偽書〉とはなにか
ニセ偽書事始 / 乗代雄介
偽書考――あるいは欲望の実体化について / 横山茂雄
偽書の条件――本の生態誌という見方 / 山本貴光
偽書と書誌学 / 安形麻理
偽書の思想史――ルネサンスからポストモダンまで / 大橋完太郎

❖詩
アレの話など / 中島悦子

❖偽者の曙光
ディオニュシオス・アレオパギテースの勝利――ヨーロッパにおける新プラトン主義の残存と神秘主義の興隆 / 伊藤博明
ある魔術的偽書のつくり方――アルテフィオの予言の書「過去・現在・未来について」 / 大橋喜之
借景――あるグノーシス主義者 / 鈴木創士
偽アリストテレスの『宇宙論』、真作と偽書のはざまで / アダム・タカハシ
文字を残してはならない、と彼は言った――ピュタゴラス教偽書と死者としての文字 / 黒川 巧

❖偽‐書叢
ヴァンパイアのいる世界 / 鍛治靖子
帝国の遺文、異聞の帝国 / 宮 紀子
歴史の真正性をめぐる論争のなかの『書経』 / 新居洋子
『源氏物語』と異本――校訂と真贋をめぐって / 越野優子
偽書さまざま――詩人ゲーテの周辺から / 石原あえか
獄門晒し首と斬首処刑人と密偵 / 野崎六助

❖起源の神話をめぐって
トンデモと学術の狭間から / 小澤祥子
修辞と予型、ほんとうの物語――古代末期地中海世界における偽書的思考 / 中西恭子
アンニウスがみた起源の夢――一六世紀フランスにおける民族神話の流行と国語意識の芽生え / 久保田静香
「失われた大陸」と「幻の偽書」 / 庄子大亮
〈正統〉と〈神聖〉の在りか――戦後天皇(制)をめぐる〈偽〉なるものの想像力 / 茂木謙之介

❖ことばを擬す
文学作品における架空の書物――スタニスワフ・レムの偽書集(アポクリファ) / 芝田文乃
言の葉の隠れる偽りと真こと / 串田純一
ウンベルト・エーコと偽書 / 橋本勝雄
言語学者は何語の夢をみるのか / 小野 文
非人間的な文字列――譁・ュ怜喧縺代・螟夊・然主義的概念化 / 廣田龍平

❖信仰と秘教
交換日記 / 樋口恭介
パラレルワールドへと進化した偽史――ファクトとフィクションのはざまに / 井辻朱美
神話や聖典とフィクション作品に違いはあるのか?――信仰における「偽書」とは / 谷内 悠
薔薇十字文書からゴシック文学へ――ブルワー=リットン『ザノーニ』における薔薇十字団と魔術 / 田中千惠子
薔薇十字、ボルヘス、インターネット / 木澤佐登志

 

❖連載
私の平成史 11 / 中村 稔

❖詩
三匹の子豚 他三篇 / 長谷部裕嗣

❖今月の作品
千種創一・牛島敦子・竹野 滴・よし・明石裕里・ピエルロモント / 選=和合亮一

❖われ発見せり
ひとりで誰かと映画を見る / 新谷和輝