スティーヴン・キング論集成

-アメリカの悪夢と超現実的光景-

風間賢二 著

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スティーヴン・キング論集成

定価3,740円(本体3,400円)

発売日2021年5月12日

ISBN978-4-7917-7376-3

恐怖をベストセラーにした男
18世紀のゴシック・ロマンス、19世紀の英国ゴースト・ストーリー、20世紀のアメリカ産パルプホラー、そして日常生活を背景に人々の体験する戦慄が描かれる21世紀――。
昔も今も人を虜にしてやまない、スティーヴン・キングの圧倒的作品世界をつまびらかにする。
批評・作品論の決定版!

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[目次]

まえがき——ようこそ、キング・ワールドへ!

第Ⅰ部 デビュー作から初期傑作『ザ・スタンド』まで。七〇年代のキング作品
1 恐怖の聖地メイン州
悪夢のランドスケープ  少年時代とキャリーのモデル  ベストセラー作家への道  架空の町、その舞台

2 批評家の戯言を聞くほど暇じゃない!――キング評集
ぼくは批評家連中の言うことを気にするほど暇人じゃない  ジャンル作家によるキング評  メインストリームのキング評  キングをより深く理解したい人のために有益な研究書  そして時代は変わる

3 五〇年代B級SFホラー映画とECコミック――「霧」『呪われた町』『クリープショー』
ホラー作家には二つのタイプがある  五〇年代B級SFホラー映画  テクノホラー――絶滅の危機  ポリティカルホラー――侵略の脅威  ECコミックス  『クリープショー』について

4 おぞましく忌まわしい少女――『キャリー』
デビュー長編『キャリー』に至る道  ポストモダン・ゴシックとしての『キャリー』  大人のための残酷童話版「シンデレラ」  忌まわしきもの  映画『キャリー』リメイク版(2013)を鑑賞して、原作を月経小説として再考

5 御大キングの真正(神聖)処女長編——『呪われた町』
初期の傑作3S  ジェルーサレムズ・ロット  ドラキュラタイプの物語  キング印の要素

6 悪霊と酒――『シャイニング』、『ドクター・スリープ』
『シャイニング』  『ドクター・スリープ』  映画版『シャイニング』と『ドクター・スリープ』

7 アポカリプス・ナウ――『ザ・スタンド』
超大作『ザ・スタンド』に至る道  『ザ・スタンド』について  ポスト・アポカリプス(黙示録後の世界)の系譜――今そこにある黙示録  聖書の黙示録  世俗化した黙示録  いつだって気分は黙示録  現代版『指輪物語』と〈闇の男〉  映像版『ザ・スタンド』

第Ⅱ部 八〇年代モダンホラー全盛期の作品から二一世紀ゼロ年代の作品まで
8 恐怖の暦物語――『人狼の四季』
暦物語ができるまで  〈内なる野獣〉が現れるとき  映画『死霊の牙』について  

9 断片化と結合の物語――『IT』
『IT』――Inter Textualityの略語  複数の声の饗宴  怪物ITの正体  映画版『IT』について  映画とはちがう原作のラストが深い  改めて「IT」とは何か?  27年周期  子ども時代の魔法  『IT』の舞台、デリーという名の町

10 虐待される作家――『ミザリー』
キングの妻が明かす『ミザリー』の真意  メタフィクションとしての『ミザリー』  作者と読者の無間地獄  ポストモダン・ダブル『ダーク・ハーフ』と「秘密の窓、秘密の庭」  『デルフィーヌの友情』と『ジャック・オブ・スペード』について

11 もうひとりのキング――『バトルランナー』
ドッペルゲンガーの死因  ドッペルゲンガーの誕生  ドッペルゲンガーの創作したSF  映画版『バトルランナー』

12 神は残酷だ! 自然主義文学としてのキング・ワールド――『デスペレーション』
キングが幼年期に戦慄した一冊  フランス自然主義文学  アメリカ自然主義文学  無慈悲にして残酷な神の支配するキング・ワールド  『デスペレーション』と〈共苦〉

13 双頭の巨人が創作したダーク・ファンタジー――『タリスマン』『ブラック・ハウス』
黄金コンビの復活  『タリスマン』について  『ブラック・ハウス』について  〈ダークタワー〉シリーズについて

14 TVのための小説——書き下ろしシナリオ三作品
『ゴールデン・イヤーズ』  『悪魔の嵐』  『ローズレッド』  『ローズレッド エレン・リンバウアーの日記』

15 「KING DAMN IT!」――『キングダム・ホスピタル』
キング、『キングダム』と出会う  ラース・フォン・トリアー版オリジナル『キングダム』  スティーヴン・キング版リメイク『キングダム』

16 九〇年代末からゼロ年代へ
九〇年代末の作品・短編集、長編、中編集――『ナイトメアーズ&ドリームスケープ』(1993)  『骨の袋』(1998)  『アトランティスのこころ』(1999)  ゼロ年代初頭の作品・長編五作――『回想のビュイック8』(2002)  『リーシーの物語』(2006)  『悪霊の島』(2008)  『アンダー・ザ・ドーム』(2009)  『11/22/63』(2011)

17 ゼロ年代から一〇年代へ——三つの短編集
Everything’s Eventual   Just After Sunset   The Bazaar of Bad Dreams

第Ⅲ部 キング・ワールドの枢軸〈ダークタワー〉シリーズ
18 〈ダークタワー〉サーガ物語要約
『ガンスリンガー』  『運命の三人』  『荒地』  『魔道師と水晶球』  『カーラの狼』  『スザンナの歌』  『暗黒の塔』

19 第一巻『ガンスリンガー』
〈ダークタワー〉サーガへの誘い  『ガンスリンガー』について

20 第二巻『運命の三人』
ライフワークとしての〈ダークタワー〉シリーズ  ローランド・デスチェイン年譜  アクション・アドベンチャー仕立ての“癒し”の物語

21 第三巻『荒地』
『荒地』  ローランド年譜 2  『シュッシュッポッポきかんしゃチャーリー』

22 第四巻『魔道師と水晶球』
『魔道師と水晶球』  つまびらかになる〈中間世界〉

23 第四・五巻『鍵穴を吹き抜ける風』
『鍵穴を吹き抜ける風』  ローランドの人格形成と〈中間世界〉

24 第五巻『カーラの狼』
『カーラの狼』  〈ダークタワー〉シリーズの根底にあるもの

25 第六巻『スザンナの歌』
『スザンナの歌』  ダークタワー世界の神話・伝説  ダークタワー世界の古代史  ダークタワー世界にかかわる〈根本原理世界〉史

26 第七巻『暗黒の塔』――「キングのマグナム・オーパス 虚実混交超物語の世界」
『暗黒の塔』  〈カ〉と〈カ・テット〉と〈ケフ〉  円環の探索行  ポストモダン・ファンタジーとしての〈ダークタワー〉  メタフィクションとしての〈ダークタワー〉  〈ダークタワー〉主要関連作品  〈ダークタワー〉を読み解くためのキー・ワード小辞典  映画化作品について

 

あとがき
初出一覧
スティーヴン・キング全作品(1974〜2020)紹介
作品索引
人名索引

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[著者]風間賢二(かざま・けんじ)

1953年生まれ。武蔵大学人文学部卒業。幻想文学研究家。翻訳家。1998年『ホラー小説大全』(角川書店)で第51回日本推理作家協会賞を受賞。主な著書に『スティーヴン・キング』(筑摩書房)、『ジャンク・フィクション・ワールド』(新書館)など。スティーヴン・キング『ダーク・タワー』(KADOKAWA)シリーズ、ホセ・カルロス・ソモサ『イデアの洞窟』(文藝春秋)、ジェフ・ニコルスン『装飾庭園殺人事件』(扶桑社)、第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査委員会推薦作品ロバート・カークマン『ウォーキング・デッド』(飛鳥新社)シリーズなど、訳書多数。