西暦一年

-「理性」と「信仰」の分断を問い直す-

スーザン・バック=モース 著,森夏樹 訳

  • はてなブックマークに追加
  • LINEでシェア
  • Google+でシェア
西暦一年

定価4,180円(本体3,800円)

発売日2021年8月27日

ISBN978-4-7917-7409-8

分断の起源を問い直す
近代の作り上げた概念の多くは一世紀に起源を持つとされ、西暦一年はさまざまな分断の起点とされてきた。しかし、宗教と政治、理性と信仰、西洋と東洋といった分断の概念は、後世からあてはめたものである。

『ユダヤ戦記』を記したフラウィウス・ヨセフス、七十人訳聖書の注釈を記したアレクサンドリアのフィロン、「ヨハネの黙示録」を記したパトモスのヨハネ。ディアスポラとされる三人のユダヤ人思想家に光を当て、デカルト、カント、ヘーゲル、ホッブス、ベンヤミン、デリダといった哲学者たちの思想を援用し、まったくあたらしい一世紀像を描き出す。

line2.gif

読者の方からお知らせいただき、本書に以下の誤りがありましたことをご報告いたします。

122頁5行目と6行目で注の79が重複しておりました。

122頁6行目の注の79は、注の80の誤りです。

またその後の、「3 歴史と形而上学――アレクサンドリアのフィロンについて」の注番号に関しまして、

注80とされる場所は注81の誤りであり、章末の注267が注268の誤りに至るまで、注番号がすべてひとつずつずれておりました。

謹んでお詫び申し上げ、訂正させていただきます。

line2.gif

[目次]


時間の所有 広がる視聴者、広がる情報源 哲学と歴史 ヒストリカル・コモンズ(歴史的共有地)プロジェクト

1 時の計測、空間の図示
最初の… 反乱軍のコイン 制約のない年代測定 時間の所有 神君アウグストゥスの神殿 場所の感覚 ディアスポラ意識 

2 時の中の翻訳――フラウィウス・ヨセフスについて
方法 比較できないものを組み合わせる 模倣能力 フラウィウス・ヨセフス 歴史的遺物としてのテクスト ユダヤ戦争 翻訳の翻訳 第二次ソフィスト運動 模倣モデルとしてのトゥキュディデス スタシス ヨセフスを彼の言葉でとらえる 距離を置くこと 都市国家とトマス・ホッブズ ノモス 言語の「法則」 変化の診断 ポレモスとしてのスタシス スタシスの悲劇としての『アンティゴネ』 モダニティの誤読 ヘーゲルのあやまち システム的統一としてのスタシス 照応

3 歴史と形而上学――アレクサンドリアのフィロンについて
セプトゥアギンタ アレクサンドリアのフィロン 法(ノモス)のレベル――フィロンの貢献 ピュタゴラス学派のフィロン 初めに…… ロゴス、音楽、そして律法 七という数字 真実の美学 コーラ(場所・空間) To on / ho ōn (τò ὄν / ὃ ῶν) アレゴリー メタアレゴリー 美学と知識

4 歴史とアイデンティティ――パトモスのヨハネについて
誰の本? ヨハネのアイデンティティ 新しい資料 死海文書 ナグ・ハマディ・パピルス 排除の方法としての普遍主義 概念的グリッドの解除 コイネー 権力の名前 皇帝崇拝 カルトとは何だったのか? 帝国のコスモロジー コイノン(Koinon) アフロディシアス 翻訳の罠 奴隷(doulos) 翻訳と超越

5 コンステレーション
Ⅰ 歴史的特殊性と哲学的普遍性
時間の特殊性 語りかけの包括性 聴衆の共同体 タイミング(適時選択)がすべて 帝国の暗黒化 遅延

Ⅱ アポカリプスはわれわれの現在ではない
創造の封印を解く ヴェスヴィオ火山 われわれの時代の最後の日 人気の黙示録 人新世(アントロポセン) 自然史の現在 ヨハネを責めるな

Ⅲ 縁辺の女
誰のための贅沢? 誰のための平和? 帝国の暴力 女性の交換 ユダヤの王たち ベレニケ 帝国の勝利 バビロンの大淫婦 余白からの翻訳 「意味づけ」――言葉の意味の内側で すべての世代が新たに読む

Ⅳ 歴史と真実
哲学的課題 曖昧さ・多義性 時間とテクスト 世界の裁き コンセプトへの反論 任務

原注
謝辞
参考文献
訳者あとがき
索引

line2.gif

[著者]スーザン・バック=モース(Susan Buck-Morss)
アメリカのフランクフルト学派研究の第一人者。著述の分野は美術史、建築学、比較文学、カルチュラルスタディーズ、哲学、歴史学、表象文化論と多岐にわたる。ヴァッサー大学卒業後、イェール大学で修士号、ジョージタウン大学で博士号取得。1978年からコーネル大学で教鞭を執り、現在は名誉教授。主な著書に、『テロルを考える──イスラム主義と批判理論』(みすず書房)、『夢の世界とカタストロフィ──東西における大衆ユートピアの消滅』(岩波書店)、『ベンヤミンとパサージュ論──見ることの弁証法』(勁草書房)、『ヘーゲルとハイチ──普遍史の可能性にむけて』(法政大学出版局)などがある。2011年にフランツ・ファノン賞を受賞した。

[訳者]森 夏樹(もり・なつき)
翻訳家。訳書にW・パウンドストーン『クラウド時代の思考術』、W・カールセン『マヤ探検記』、D・C・テイラー『イエティ 雪男伝説を歩き明かす』、M・アダムス『アラスカ探検記』、S・ジェンキンス『ヨーロッパ全史』、S・クルサード『羊の人類史』(以上、青土社)、T・ジャット『記憶の山荘■私の戦後史』、A・M・ルロワ『アリストテレス 生物学の創造』(以上、みすず書房)、Ph・ジャカン『アメリカ・インディアン』(創元社)ほか。