賃労働の系譜学

-フォーディズムからデジタル封建制へ-

今野晴貴 著

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賃労働の系譜学

定価2,420円(本体2,200円)

発売日2021年11月26日

ISBN978-4-7917-7394-7

能力至上主義社会に抗して。
「ブラック企業」「過労死」「労働の質の劣化」。なぜ労働環境は改善されないのか。その系譜と構造を明らかにし、労働の視点から現代資本主義社会とその行く末を読み解く。
人々の生存と尊厳を守り自由を獲得するためには何が必要なのか、不本意な労働に立ち向かうための社会学。

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[目次]

はじめに

第Ⅰ部 日本型資本主義と労働の現在地
第1章 「ブラック企業」はなぜなくならないのか?
1 継続する日本の労働問題
2 なぜ、ブラック企業がなくならないのか――賃労働の系譜

第2章 日本型資本主義社会と「ブラック企業」
1 資本主義と「ブラック企業」
2 日本社会と「ブラック企業」
3 日本の「自発性」はアトム化と従属の現れ

第3章 「ブラック企業」が資本主義社会を救う? オルタナティブとしての「ブラック企業」
1 資本主義の行き詰まりとサービス産業化の進展
2 資本主義社会の救世主としての「ブラック企業」
3 「ブラック企業」の震源地

第Ⅱ部 何が労働者を守るのか
第4章 労働における「コンプライアンス」をどう考えるか? 〈労働社会〉の規範を作り出す労働運動
1 労働におけるコンプライアンス
2 コンプライアンスの揺らぎ
3 権利を生成する労働運動の必要性

第5章 今日のストライキ、その特徴とは何か? 新しい連帯と権利の創造
1 ストライキの「原理」と諸類型
2 現代日本のストライキの特徴
3 なぜ、ストライキが有効なのか

第Ⅲ部 何が社会を変えるのか
第6章 「ブラック企業」の源流 ネットスラングから社会問題へ
1 「ブラック企業」現象を振り返る
2 「ブラック企業」はなぜネットから始まったのか?
3 「ブラック企業」の特徴
4 共通する「ブラックバイト」の労働問題

第7章 伝播する「ブラック企業」 言説・社会運動から、定義・社会政策へ
1 社会問題としての「ブラック企業」問題――「定義」をめぐって
2 「言説」と社会運動
3 ブラック企業対策プロジェクトの試み――「言説」と連帯
4 政策への影響
5 「ブラックバイト」問題への「伝播」

第8章 新しい労働運動が社会を守り、社会を変える
1 変化する労働運動の「対抗軸」
2 新しい労働運動の特徴
3 今、どのような労働運動が必要か?――広がり続ける「新しい労働運動」

第Ⅳ部 ポスト・キャピタリズムと労働の未来
第9章 日本の資本主義と「アフター・コロナ」 生存権と賃労働規律から読み解く
1 労働・福祉相談から見えること
2 コロナ禍における日本の統治
3 「危機」の比較と主体性

10章 ポストキャピタリズムと労働組合運動 AI、シェアリング・エコノミーは労働組合運動にどのような変化を迫るのか
1 ポストキャピタリズムと労働組合運動
2 労働組合運動のフォーディズム的編成
3 アルゴリズム、シェアリング・エコノミー・アントレプレナーシップ
4 労働者の相互敵対と賃労働規律

第11章 労働と資本主義の未来を考える
1 分岐する資本主義と労働の未来、「デジタル/テクノ封建制」の登場
2 労働社会の「対立軸」の展望



あとがき――「使い潰し」経済からの脱却へ
初出一覧
参考文献

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[著者]今野晴貴(こんの・はるき)

1983年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。専門は労働社会学、労使関係論。現在、NPO法人POSSE代表。駒澤大学経済学部及び聖学院大学政治経済学部非常勤講師、沖縄大学地域研究所特別研究員、北海道大学公共政策学研究センター上席研究員。Yahoo!ニュース個人オーサー。2013年に大佛次郎論壇賞及び流行語大賞トップ10受賞。2014年に日本労働社会学会奨励賞受賞。単著に、『ブラック企業』(文春新書)、『生活保護』(ちくま新書)、『ブラック企業ビジネス』(朝日新書)、『君たちはどう働くか』(皓星社)、『ブラックバイト』(岩波新書)、『ブラック奨学金』(文春新書)、『ストライキ2.0』(集英社新書)などがある。