生ける物質

-アンリ・ベルクソンと生命個体化の思想-

米田翼 著

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生ける物質

定価3,520円(本体3,200円)

発売日2022年6月1日

ISBN978-4-7917-7472-2

ヒト・昆虫・植物・石の境界を探る

哲学の本は、忘れられたものから未来を炸裂させる。100年前、ベルクソンという偉大な哲学者が独自の「進化論」をつくった。生命とは何か、宇宙とは何かを考え抜いていた。本書は今、その意味を未来へと解き放つ。哲学的冒険の書である。――千葉雅也

ベルクソンの『創造的進化』を、当時の生物学の潮流を丁寧に検討しながら再構築し、その思考を生命的な創発論として現代的問題にまでつなげていく、注目の著者による画期的な仕事。「生命の時代」であり、ビオスの力が今一度問いなおされる現代において、さまざまな思考を触発する必読書である。――檜垣立哉

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[目次]

序 章      生ける物質
はじめに——地球生物学から宇宙生物学へ
1 創造的進化論の受容と忘却——本書の目的
2 ベルクソンの方法と形而上学——本書の方針
3 持続と有機的組織化——『意識の直接与件についての試論』における組織化・個体化
4 真の進化主義と有機的組織化——『創造的進化』における組織化・個体化
5 本書の構成

第一章      創造と世界——イギリス創発学派のベルクソン解釈を手がかりに
はじめに
1 トンケデックによる創造概念の解釈
2 1920年代の初期創発主義者に対するベルクソンの影響
3 ロイド・モーガンとベルクソン
4 アレクサンダーとベルクソン

第二章      生物とは何か——個体性と老化の問題
はじめに
1 『創造的進化』における個体論と老化論の位置づけ
2 有機体はいかなる意味で無機物とは異なるのか——個体性の肯定的規定の明確化
3 『創造的進化』におけるル・ダンテクへの言及
4 ル・ダンテクの個体論と老化論
5 ベルクソンの個体論と老化論の再構成
補遺 自然死と事故死

第三章      何が個体発生を導くのか——個体性と遺伝の問題
はじめに
1 『創造的進化』における獲得形質の遺伝をめぐる問題
2 ヴァイスマンの生殖質説
3 ベルクソンの遺伝論①——獲得形質の遺伝批判と偏差の遺伝モデル
4 ベルクソンの遺伝論②——系統発生論の観点から
5 遺伝、老化、個体

第四章      ミクロな世界で蠢く生物たちの自由——個体性と行動の問題
はじめに
1 生命の現在と生命の記憶力——個体・老化・遺伝の関係を見定める
2 生体と外界の一般的関係
3 生体と外界の個別的関係——ジェニングスの行動生物学、あるいは『物質と記憶』
4 行動の多重因果性

第五章      適応と再認——種レベルの習慣形成の運動としての組織化・個体化
はじめに
1 進化の原因は何か?
2 受動的適応概念を再考する
3 能動的適応概念を再考する
4 適応と再認——あるいは習慣形成の二つの水準

第六章      自然における意識の位置づけを問い直す——心的活動の進化と組織化の諸相
はじめに
1 階層的・序列的な自然観の形成——ロマネスからロイド・モーガンへ
2 二つの進化観——ロマネスの単線的進化とベルクソンの分岐的進化
3 創造的進化論——ベルクソンの分岐的進化観と意識の二重化の運動
4 ベルクソンの進化論——組織化・個体化の観点からの再構成

第二章から第六章までの総括

第七章      鳴り止まない生命と宇宙の交響曲——持続の一元論・現実主義・成長宇宙説
はじめに
1 存在者を構成する素材(持続)の一元論——持続の緊張と弛緩
2 現実主義——無秩序と無の観念に対する批判を通して
3 成長宇宙説——地球外生命体に関する思考実験を通して

補論① 時空、決定、創発——アレクサンダーの時空の形而上学について
はじめに
1 時空論——諸事物を構成する究極的実在について
2 カテゴリー論——諸事物の普及的特徴について
3 創発論——諸事物の可変的特徴について
4 結びにかえて

補論② 個体化の哲学における生殖の問題——シモンドンの場合
はじめに
1 シモンドンとベルクソンの個体化論
2 結晶の成長
3 生命系の機能的二元性——成長・内的発生と生殖・外的発生
4 シモンドンのヴァイスマン批判——シゾゴニー、再生、環境の変調
5 結びにかえて

あとがき
初出一覧
参考文献
人名索引/事項索引

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[著者]米田 翼(よねだ・つばさ)

1988年生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科にて博士号を取得(人間科学)。現在、大阪大学大学院人間科学研究科附属未来共創センター助教。専門はベルクソンを中心とするフランス哲学、19-20世紀の英・独・仏の生物学の歴史・哲学。主な論文に「個体化の哲学における生殖の問題——ヴァイスマン、ベルクソン、シモンドン」『思想』第1141号(2019年)、「適応と再認——ベルクソンの行動の進化論」『年報人間科学』第42号(2021年)、共訳書にジルベール・シモンドン『個体化の哲学——形相と情報の概念を手がかりに』などがある。