メンタルクリニックの社会学

-雑居する精神医療とこころを診てもらう人々-

櫛原克哉 著

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メンタルクリニックの社会学

定価2,640円(本体2,400円)

発売日2022年6月27日

ISBN978-4-7917-7482-1

「治る」と「治らない」のはざまで。
1990年代以降、都市部を中心に雨後の筍のごとく急増したメンタルクリニック。心身の不調から日常的な悩みまで「メンタル」をめぐるさまざまな問題が持ち込まれ、必要に応じて診断や治療がなされる。

メンタルクリニックへの接近と離反を繰り返す患者、そしてそれに寄り添うスタッフへのインタビューを主軸に、現代の自己変容のかたちを紐解く。生きづらさをかかえる人びとに寄り添う社会学。

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[目 次]
 

序 章 メンタルクリニックの社会学
1 メンタルクリニックの増殖
2 メンタルヘルスをめぐる問題と社会学
3 本書の構成
 

第1章 メンタルクリニックの誕生
1 「メンタルクリニック」とは何か
2 メンタルクリニックの原点
3 「神経科」の増加と神経症の時代
4 広がるメンタルクリニック
5 メンタルクリニックと現代
 

第2章 不安定な医療化――何を医療とみなすのか
1 反精神医学の系譜
2 精神科診療所と治療対象の拡大――イギリスとアメリカの事例
3 「パーソナリティ」から「精神疾患」への転換――DSM革命と脳神経化学の興隆
4 「抗うつ薬の時代」――精神科薬物療法
5 認知行動療法の台頭――精神療法
6 さまざまな「自己のテクノロジー」――百花繚乱、百家争鳴のなかで
7 不安定な医療化
 

第3章 トラブルの「実在」をめぐる問い
1 診てもらうべきトラブルをめぐる問い――対人間のトラブルのミクロポリティクス
2 身体トラブルの経験
3 精神的なトラブルの発生源の有無
4 「精神科に行くの……?」
5 自己診断と認知をめぐる問題
6 性格や人格の掘り下げ――過去の探究
7 医療従事者はどう診るか――トラブルの受け止めと対応
 

第4章 治療する自己――薬・脳・こころをめぐる語り
1 精神科薬物療法――何を治そうとするのか
2 薬効をめぐる語り――効く薬と効かない薬をめぐる問い
3 脳神経化学的な〈知識〉の習得と〈実感〉の不在
4 薬理作用と依存
5 「カウンセリング」にふれること
6 認知行動療法をめぐる語り
7 追い求められた「根本」
 

第5章 「治る」と「治らない」のはざま
1 医療者との関係のなかで
2 どこまで治せるか
3 診断の探求――「病い」から「疾患」へ
4 どこかで立ち止まること――「発達障害」という言葉
 

終 章 メンタルクリニックの「出口」

 

あとがき/註/付録/参考文献/索引

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[著 者]櫛原克哉(くしはら・かつや)

東京大学大学院 人文社会系研究科 社会文化研究専攻 博士課程修了。博士(社会学)。専門社会調査士。日本学術振興会特別研究員(DC2)を経て、現在、東京通信大学情報マネジメント学部講師。共著に『支援と物語の社会学』(生活書院)。主要論文に「精神医療技術を通じた自己形成に関する社会学的研究」(『社会学評論』)、「精神科薬物療法と自己」(『こころと文化』)、「精神医療領域における認知行動療法の社会学的考察」(『東京通信大学紀要』)などがある。