ユリイカ2022年7月号 特集=スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ

-『戦争は女の顔をしていない』『チェルノブイリの祈り』『セカンドハンドの時代』…耳の作家、声による文学-

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ユリイカ2022年7月号 特集=スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ

定価1,650円(本体1,500円)

発売日2022年6月27日

ISBN978-4-7917-0419-4

映画『戦争と女の顔』7月15日公開
アレクシエーヴィチは「小さな人々」の声をひたすらに聞く。20世紀ソ連の大きな物語のなかを生きた一人ひとりの感情を掬いあげた作品群は「現代の苦しみと勇気に捧げられた記念碑」と評され、ノンフィクション作家として初めてノーベル文学賞を授与されることとなった。そしていま彼女の追い続けるテーマはアクチュアルなものとして我々の眼前に迫っている——『戦争は女の顔をしていない』のコミカライズ(2019-)が注目を集め続けるなか、来たる7月15日には同作を原案としたロシア映画『戦争と女の顔』が公開となる。いまこそアレクシエーヴィチの織り成す文学、そして彼女の拾いあげた幾つもの声に耳をすませたい。
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【目次】

特集*スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ——『戦争は女の顔をしていない』『チェルノブイリの祈り』『セカンドハンドの時代』…耳の作家、声による文学


❖インタビュー
文学はあるべき姿を取り戻した / スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 聞き手・構成=沼野恭子/訳=ターニャ・ミツリンスカヤ

❖アレクシエーヴィチの声
声を翻訳する / 松本妙子
それを「ドキュメンタリー」と彼女は語った / 鎌倉英也

❖「聞き書き」の言葉
とばりの向こうの声を集める——アレクシエーヴィチ、「聞き書き」の力 / 佐藤 泉
ベラルーシの作家としてのアレクシエーヴィチとロシア語 / 越野 剛
切なる声の中継者——聞き書きという生きざま / 奈倉有里

❖歴史と記憶
声の怖さ / 朴沙羅
二番煎じの悲劇の場所から / 安東量子
聞く者たちの文学、忘却に抗するための会話 / 瀬尾夏美
語られなかったこと、書かれなかったこと / 近藤ようこ

❖戦争をめぐる語りと沈黙
アレクシエーヴィチの女性たち——ナラティブの身体性 / 高柳聡子
「語られない」声に耳を澄ます / 市川ひろみ
国民化の欲望と戦争の記憶——女性兵士の/についてのナラティブ / 前田しほ
帰還兵たちの〈沈黙の海〉——軍事精神医療の歴史と証言から考える / 中村江里

❖対談
アレクシエーヴィチの文学はいかに芽吹くか / 沼野恭子×小野正嗣

❖ウクライナ侵攻のさなかで
亜鉛の記憶 / 岡 真理
『チェルノブイリの祈り』を読む——問われる“福島”からの覚醒 / 安元隆子
痛みへのノスタルジア——アレクシエーヴィチ『セカンドハンドの時代』におけるポストソヴィエトの徴候 / 平松潤奈
声なきものの声を織る——スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの「小さき人々」 / 中西恭子

❖二一世紀の日本から
たくさんのわたし / 今日マチ子
「生の声」を提示する、アレクシエーヴィチの思想 / 逢坂冬馬
戦争に抗う / 深緑野分
『戦争は女の顔をしていない』と漫画表現 / 速水螺旋人

❖〈戦争〉と〈女〉
「戦争漫画」と女性——コミカライズ版『戦争は女の顔をしていない』によせて / 藤岡俊博
肉の空洞——フェミニスト映画批評の性器的展開のために / 木下千花
距離の回復——『戦争と女の顔』における身体 / 畠山宗明

❖資料
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著作解題+いま読むための関連作品ガイド / 高柳聡子

 

❖忘れられぬ人々*9
故旧哀傷・木内良胤 / 中村 稔

❖物語を食べる*18
残されし人々の帰還 / 赤坂憲雄

❖詩
星ノ紅茶 / 小野絵里華

❖今月の作品
ユウ アイト・二宮 豊・小川芙由・渡辺八畳 / 選=大崎清夏

❖われ発見せり
天界に「奇異」を放て / 中西悠喜

 

表紙・目次・扉……北岡誠吾
表紙写真……TT News Agency/アフロ