世界は時間でできている

-ベルクソン時間哲学入門-

平井靖史 著

  • はてなブックマークに追加
  • LINEでシェア
  • Google+でシェア
世界は時間でできている

定価3,080円(本体2,800円)

発売日2022年7月25日

ISBN978-4-7917-7488-3

物質の時間から心の時間まで。
多層的な時間が織りなす世界を素描する。

わたしたちの周りにはたくさんの”時間”が存在している。例えばハエは光が点滅して見えるような時間感覚を持っているし、植物はわたしたちの持ち合わせている時間感覚では遅すぎて気づかれないダンスを繰り広げている。時間の問題はわたしたちが想像するよりもはるかに複雑で、神秘的で、絡み合っている。ベルクソンの時間哲学に踏み込んで、もっとも馴染み深く、もっとも難解な「時間」を紐解いていく。唯一無二の入門書。

line2.gif

[目次]

序 章  時間哲学入門――計測の時間と体験の時間
1 時間の多義性を整理するために
2 持続とは何か
3 時間の計測
4 時間の体験
  コラム 時間に速さはあるか 
5 時間クオリア

第1章  時間で解くクオリアの謎――物質の時間と意識の時間
1 MTS(マルチ時間スケール)解釈の見取り図
2 出発点を見定める――物質の時間
3 クオリアの何が問題なのか
4 クオリアと時間
  コラム 錐体細胞とクオリア
  コラム 凝縮説の起源
  コラム 単位以上と単位以下

第2章  どうすれば時間は流れるのか――現在という窓
1 瞬間から幅のある現在へ
2 「流れ」のシステム要件
  コラム ベルクソンと現代時間哲学
3 相互浸透と共時性
4 持続のレシピ
  コラム ベルクソンと時間経験の哲学

第3章  過去を知る――時間と心
1 記憶のために脳ができること――痕跡説
2 ベルクソンの純粋記憶理論
  コラム 純粋記憶の不可侵性解釈とMTS解釈
3 記憶と人格
4 時間を開き抜く
5 過去のナビゲーション
6 今だけじゃない時間
  コラム ベルクソンと現代時間存在論

第4章  身体とシンクロする世界――運動と知覚
1 知覚はどこにあるのか
2 ボトムアップとトップダウン
  コラム ベルクソンの拡張された自然主義
3 現代認知科学とベルクソン――ベルクソン版ファスト&スロー
4 世界と噛み合わない

第5章  空間を書き換える――折り畳まれた時間
1 もう一つの記憶
2 運動が彫り刻む風景
3 進化が折り合いをつけるまで
  コラム 二つの秩序
4 ここだけじゃない場所
5 プロセスの時間とシステムの時間

第6章  創造する知性――縦糸の時間と横糸の時間
1 意識の住み処を確保する
2 イメージを用意する
3 過去は現在に作用できるか――想起と模倣
4 別な仕方でものを見る

第7章  時間と自由
1 必然と偶然の向こう側
2 「心が決まる」とはどういうことか
3 折り合いのはざまで
4 他のいつでもない今
  コラム 現実の自然こそが最速の演算である
5 時間がかかる、時間をかける

あとがき
参考文献
索引

line2.gif

[著者] 平井靖史(ひらい・やすし)

福岡大学人文学部・教授。専門はベルクソンおよびライプニッツを中心とする近現代フランス哲学。
共編著に『ベルクソン『物質と記憶』を解剖する』、『ベルクソン『物質と記憶』を診断する』、『ベルクソン『物質と記憶』を再起動する』(以上、書肆心水)など。共訳書にベルクソン『意識に直接与えられたものについての試論』(ちくま学芸文庫)、ベルクソン『時間観念の歴史』(書肆心水)などがある。