哲学的洞察

永井均 著

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哲学的洞察

定価1,980円(本体1,800円)

発売日2022年9月6日

ISBN978-4-7917-7490-6

SNSの街角に立つ、ネゲントロピーの哲学者
2014年から2021年のツイートから哲学を主題とするものを厳選した本書は、生活のただなかにある哲学者の日々の思索が息づいている。流れゆくつぶやきを紙にとどめて、何度でも繰り返し考える。哲学はいつでもどこでもできる――あらゆる人を哲学に誘う刺激とやさしさに満ちた一冊。

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[目次]

巻頭インタビュー 永井均にとっての哲学

Ⅰ 哲学とは何か
純哲学と大衆哲学/ 解釈の独自性/ 顕教と密教/ 知らないこと自慢としての哲学/ 秘密と言葉/ カントの弁証法/ 哲学とは何か/ 過去の予期、未来の想起を妨げるもの/ 他人の哲学/ つまらない真理/ 他人の哲学は的を外している/ すでにある問題/ 心・物/ アカデミックパラダイム/ プラトンに始まる哲学の欠陥/ 馬鹿の相対主義/ 哲学の業界的本質/ タテ問題に誤読する/ 哲学そのものが好き/ 歴史的に位置付けて正当化する/ 待機説法/ 弁証論と対話の不成立/ 知の資本家/ 作家と文学研究者/ いたち/批判と称賛/ 事実の問題と意味の問題を峻別する思考法/記憶とはなにか(1)/ 懐疑論と独在論/ 真理には残酷な面がある/ 査読に通るような論文/『世界の独在論的存在構造』/ 意外なこと/ トレーニングしちゃだめ/ 近代があったか

II 哲学的洞察
チェスの冠/ 両想い・両憎しみ/「自-他」と「実-虚」/ 時計/ この手、この口/ 第0次内包と無内包/ 重要なこと/ 時間と時計/A系列/無今論/ 人によって世界の色が違う/ 独今論が語りえない理由/ その時点における今/『ウィトゲンシュタインの誤診』/ 時間は合成的/ 独在性の内部矛盾/ ゾンビでないのになぜ他人? /『改訂版 なぜ意識は実在しないのか』(1) / 悪霊/『改訂版 なぜ意識は実在しないのか』(2) / 山括弧の由来/ 空間に関するAとB /『時間の非実在性』/ 外側から捉えうる何かの内側ではないような内側/ライプニッツの神/ 認識論/ 任意か所与か/ 私的言語/ 宇多田ヒカル/ 私の数(1) / 胸と背中/ デイヴィッド・ルイスの素晴らしさ/ 私の数(2) / 切れを二重に入れている/ すべての語は固有名/ 地球以外の人たち/ 第一基準による識別を超えるもの/ 大澤真幸氏との対談/ まるで違う解釈/ 中心性と現実性/「本質・対・実存」の隠蔽/ またこの人/「今」に内在する矛盾/ 世界が青くなる/「ヨコ問題というものがわからない」症状/『世界の独在論的存在構造』出版/「唯物論的独我論」という煩悩/ 世界像選択の問題/ 色めき立ってしまう/ 一方向性は実在しない/ 独在性の二つの意味/ 永遠の無/ 驚き/〈私〉と実在論・反実在論/ 唯物論的独我論(1) / 超越論的観念論vs.独在論/ この4月28日/『純粋理性批判』の誤訳/ タテ問題/ 同一性の気づき/ 唯物論的独我論(2) /完全犯罪/ 無駄な存在/ 自然主義と〈私〉/『世界の独在論的存在構造』コメンタリー/ 東洋の専制君主/ 私の使う「私」/ 自分と他人の違い/「おいては」抜きに/ 顔のない人/ マクタガートとダメット/ 木村敏/ 私は主人公、私はスクリーン/ 唯物論的独我論(3)/ なぜ私は他の誰でもなく…… /『青色本』の後半/ むきだししかなさ・とってはしかなさ/ 今欺く神/ 赤穂浪士/ 百年前の世界

III 哲学的所見
浸透しない意識・等質的時間/ 基準/ 触覚語・視覚語/ 心理的利己主義/ 他人は口なり/ デカルト/ 不一致対称物/ 普遍とこの私/ たまたまの超越論性/ 外的自由・内的自由/ 全体論と市場経済/ 文法は現象するか/ 偶然/ 概念化/「み」と「さ」/ 超越論哲学の意義/ 現在主義/ 夢の中との連続性/ 数学と存在論的証明/欲求充足と志向性/ 松本智津夫の自由意志/ 裏表概念の獲得/ 冷徹な世界認識/ 超越論的自然主義/ 私的言語とは何か? / 意志は意志できない/ 反出生主義/ 把持・予持/ 何々感を感じる/ 意味に支えられて/ 記憶とはなにか(2) /急に興味をなくしてしまう/ 真理の区別/ ヨコ問題としてのクオリア/ 道徳の根拠/ 道徳の大きさ/ この世で生きるための前提知識/ 正義を不正義であるがゆえに

Ⅳ 哲学の周辺
田島正樹・戸田山和久/ ボルケナウ・丸山眞男/『東大助手物語』/ 編集者/ 若松英輔『魂にふれる』/ レーニンの哲学ノート/ 掘り下げた思考/『あるようにあり、なるようになる』/ 哲学ネイティヴ/ 哲学者の成功/『秘密の日記』/『ニーチェを知る事典』/『死と生きる』/『哲学の木』/ メイヤスー/ 出版社が決めること/ 意味の論理学/ 高橋久一郎先生の最終講義/ 田島正樹の最高傑作/ 一般読者が哲学書に親しむ/シュティルナー/ 大庭健/『疾風怒濤精神分析入門』/ 野矢茂樹先生の書評/ プラトンと資本主義/ 黒田入門、永井入門/ 飯田と丹治/ 池田晶子と石黒ひで/ 編集者富岡勝/ ドイツ語で完璧に書けたら/ 本当はたいしたことないシリーズ/ 主体性論争/ 坂本百大

文献一覧
あとがき

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[著者]永井均(ながい・ひとし)

1951年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業・同大学院文学研究科博士課程単位取得。信州大学人文学部教授、千葉大学文学部教授、日本大学文理学部教授を歴任。専門は哲学・倫理学。著書に『存在と時間 哲学探究I 』(文藝春秋、2016年)、『世界の独在論的存在構造 哲学探究II』(春秋社、2018年)、『哲学の密かな闘い』(岩波現代文庫、2018年)、『遺稿焼却問題』、『独自成類的人間』(ともにぷねうま舎、2022年)。