そうしないことはありえたか?

-自由論入門-

高崎将平 著

  • はてなブックマークに追加
  • LINEでシェア
  • Google+でシェア
そうしないことはありえたか?

定価2,860円(本体2,600円)

発売日2022年9月20日

ISBN978-4-7917-7492-0

自由の哲学の最前線。
「私たちは果たして自由であるのか」。この問いは長年の哲学者たちの悩みのタネで、この二千年来さまざまに議論が繰り広げられ、その論争は今日もなお続いている。
決定論、他行為可能性、フランクファート型事例、自由の源泉性、ヴァンインワーゲンの帰結論証、リバタリアニズム、運、ストローソンの責任理論……。古典的な考え方から最新の議論まで網羅し、自由を考えるためのキーワードやその考え方をていねいに紐解く。入門書にして決定版。

line2.gif

[目次]

序 章 なぜ自由を哲学するか?

1 運命と決定論
2 私たちの活動は因果連鎖のチェーンにすぎないのか?――因果的決定論
3 なぜ自由は私たちにとって重要なのか?――自由のニヒリズムに応答する
4 責任、非難に値すること、称賛に値すること
5 自由と決定論は両立するか?――論争の整理
6 本書の方法と構成
 

I 自由の二つのモデル

第1章 そうしないことはありえたか?――自由の他行為可能性モデル

1 分岐道を選ぶ自由――自由の他行為可能性モデル
2 他行為可能性と責任――他行為可能性原理(PAP)の定式化
3 他行為可能性は責任に必要か?――「フランクファート型事例」の衝撃
4 行為者に他行為可能性は存在したか?――フランクファート型事例に対する反論(1)
5 行為者は何をするべきだったのか?――フランクファート型事例に対する反論(2)
コラム① 現代版のフランクファート型事例――ペレブームとジネットの論争

第2章 自由とは「自らに由よる」ことか?――自由の源泉性モデル

1 自由の源泉性モデル
2 欲求を反省する能力――フランクファートの二階の意欲説
3 人間であること、自由であること
4 なぜ二階の意欲が特権視されるのか?――二階の意欲説に対する反論(1)
5 意志の弱さという現象――二階の意欲説に対する反論(2) 
 

II 自由と決定論の両立可能性

第3章 決定論は自由の余地を無くすのか?――帰結論証の検討

1 「決定論」とは何か?――厳密な定義
2 自由を厳密に論証する――ヴァン・インワーゲンの帰結論証
3 「できる」の概念分析――古典両立論
4 「できる」は「ならば」で分析できるか?――古典両立論に対する批判
5 「できる」を傾向性で分析する――傾向性両立論の検討
コラム② 帰結論証の厳密な定式化と、マッケイとジョンソンによる反論

第4章 私たちは操り人形にすぎないのか?――源泉性モデルへの挑戦

1 決定論のもう一つの脅威――自由の源泉性モデルへの挑戦
2 操作、決定論、そして責任――操作論証
3 操作に固有の特徴は何か?――両立論からの穏健な応答の検討
4 操作された行為者も責任を有する?――両立論からの「強硬」な応答の検討

第5章 「運」は自由を脅かすか?――リバタリアニズムの検討

1 リバタリアニズムとは何か
2 非決定論と自由な行為――ケインの出来事因果説
3 運の問題――非決定論的な行為は「単なる運」にすぎないのか?
4 なぜ「運」は自由を減じるか?(1)――「コントロールの欠如」からの議論
5 なぜ「運」は自由を減じるか?(2)――「対比的説明の不在」からの議論

第6章 「自由なき世界」の可能性――楽観的懐疑論の検討

1 懐疑論は私たちの生に何をもたらすのか?
2 刑罰、応報主義、そして自由
3 刑罰を正当化する――帰結主義的な正当化
4 加害者を隔離すること――ペレブームの「隔離モデル」
5 隔離モデルへのいくつかの批判
コラム③ 「自由」の信念は実践的に重要か?――実験心理学からの議論

 

Ⅲ 自由と責任のつながりを再考する

第7章 怒りと責任――ストローソンの責任理論

1 反応的態度
2 なぜ決定論は責任への脅威とならないのか?
3 反応的態度は人間本性にとって本質的か?――ストローソンへのいくつかの批判
4 マッケンナの「責任の会話理論」 


第8章 「責任」のレンズを外して自由を探求する

1 責任ファーストの自由論
2 自由の価値の多面性――自己表現、人生の意味、愛
3 新しい自由論の可能性
 


あとがき
参考文献
 

line2.gif

[著者]高崎将平(たかさき・しょうへい)
1990年生まれ。東京大学人文社会系研究科博士課程満期取得退学。現在、早稲田大学講師、國學院大學講師ほか。哲学雑誌「フィルカル」にて、三回にわたり自由論入門記事を連載。論文に"Frankfurt-Style Cases and Unavoidable Blameworthiness”(『論集』37号. 80-91、「自由の価値の多面性」(『現代思想』49巻9号、2021年)など。 訳書にジョセフ・K・キャンベル『現代哲学のキーコンセプト 自由意志』(岩波書店、2019年)がある。