人類学者がのぞいた北朝鮮

-苦難と微笑の国-

鄭炳浩 著,金敬黙、徐淑美 訳

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人類学者がのぞいた北朝鮮

定価3,520円(本体3,200円)

発売日2022年9月26日

ISBN978-4-7917-7393-0

彼らはなぜ過酷な環境の中でも微笑むのか?
北朝鮮理解のための重要書。
高圧的な官僚、マスゲームの子どもたち、地方の闇市場で活躍する主婦、平壌の観光客向けホテルで働く教育ママ、空腹で国境をさまようコッチェビ、故郷を恋しがる脱北者――。韓国の文化人類学者が、現地の経験から得た豊富なエピソードと分析から、知られざる北朝鮮の実態を描き出す。北朝鮮理解のための重要書。

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[目次]

日本語版によせて

はじめに

第一章 青年将軍
1 「いかに共和国が困難な状況でも」―核爆弾と交渉戦略
2 「ザッザッザッの足音」―世襲と変化
3 「外貨稼ぎの労働者」―理念から発展へ
4 「社会主義文明国」―挫折と飛躍

第二章 幸福を教示する国
1 「わたしたちは幸せです」―関係と帰属意識
2 「子どもはこの国の王さまです」―子どもたちの栄養食
3 「愛しの将軍(チャングンニム)」―恋慕と賛歌

第三章 父の国の教育
1 「革命の最高種子」―孤児たちの父
2 「他国で育つ子女」―里子の政治
3 「三つ子は国の宝物」―社会工学の実験
4 「教授の息子は教授に、農民の息子は農民に」―教育と階級の再生産 

第四章 「太陽民族」の誕生
1 「お日さまとひまわり」―首領と人民
2 「故郷の家から宮殿まで」―神話と巡礼
3 「首領は永遠に私たちと共におられる」―永生と復活
4 「三人の将軍伝説」―白頭血統の誕生
5 「アリラン公演」―劇場国家の祝祭

第五章 パルチザンと苦難の行軍
1 「アメ公どもの鼻っぱしらを折ってやる」―抵抗の歴史
2 「朝鮮がなければ世界もない」―先軍政治
3 広く、深く、静かな飢え―大飢饉の傷あと
4 「苦難の行軍」―災難と美化
5 虫下しと栄養サプリ―飢饉救済と官僚主義の壁

第六章 差別と処罰
1 「地方進出の指令が下りた」―中心と周縁
2 「地主だったのですか」―階級と成分
3 「成分が純粋なので」―純粋と汚染
4 「革命の両輪」―男性と女性
5 「録音している音が聞こえませんか」―監視と処罰

第七章 底辺の流れ
1 「必要な道を模索することもある」―非公式経済
2 「朝鮮のほうが資本主義的です」―公式と非公式
3 「草と肉、絹と瓦屋根」―実現できなかった夢
4 「こういうのがいちばん楽しいんだよな」―遊びと笑い
5 「私たちは教養がしっかりしているので」―組織生活と役割劇

おわりに

謝辞
出典注
訳者あとがき
図版出典・提供者一覧

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[著者]鄭炳浩(チョン・ビョンホ)
1955年ソウル生まれ。博士(人類学)。漢陽大学名誉教授。元韓国文化人類学会長。米国イリノイ大学で人類学の博士号を取得。専門は文化変動論、実践人類学。韓国の共同保育と共同体教育運動を導きながら、北朝鮮の子どもの飢餓救護活動、脱北青少年教育支援に関わる。共著にNorth Korea: Beyond Charismatic Politics, Rowman & Littlefi eld Publishers, 2012(鄭炳浩、権憲益著、趙慶喜訳『「劇場国家」北朝鮮─カリスマ権力はいかに世襲されたのか(仮)』近刊、法政大学出版局)がある。

[訳者]金敬黙(キム・ギョンムク)
早稲田大学文学学術院教授。専門は現代アジアの政治・社会・文化。韓国外国語大学卒業後、東京大学大学院修了。著書に『越境するNGOネットワーク』(明石書店、2008年)、編著に『教養としてのジェンダーと平和』(法律文化社、2016年)、『越境する平和学』(法律文化社、2019年)などがある。

[訳者]徐淑美(ソ・スンミ)