モーツァルトの至高性

-音楽に架かるバタイユの思想-

酒井健 著

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モーツァルトの至高性

定価4,180円(本体3,800円)

発売日2022年11月26日

ISBN978-4-7917-7517-0

芸術の深奥をみつめて
それまでの音楽の枠組みを軽やかに超えて傑作を生みだした音楽家。生の核心や宗教やエロスの根源をとらえようと思索しつづけた稀代の思想家。この二つのまなざしが交じわったとき、芸術とはいったい何か、という問いがあらたな相貌をもって立ち現れてくる。変質、供犠、なにでもないもの、内奥性、そしてパロディ――。神秘のヴェールに隠された私たちをひきつけてやまない魅力の正体をあきらかにする。斬新なモーツァルト論にして、かつてない芸術論。

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序章 バタイユからモーツァルトに橋を架ける
語られないもの
研究の在り方
バタイユの芸術論の基本
考古学――宗教と芸術の融合する現場へ
エロスの根源性――解体と結合
モーツァルトのエロス
分離していく芸術家
近代フランスの事情
総合芸術の魅力
一七九一年のヴィーン
パロディについて――バフチンとともに
笑われ格下げされるモーツァルト
バーレスクでもグロテスクでもなく
この世界はパロディでつながっている
メルヘンの才能
コスモスの音楽
なぜモーツァルトなのか
第二の無のために

第1章 個人的体験から
パリの小さな名画座にて
狂気のなかの自意識
情感よりも技術
陰の太陽
神秘と絶望
モーツァルトへの空虚感
存在するものへ
春への憧れ
道化師たちとの愛の戯れ
近代以前の愛の感性
フーガを好むコンスタンツェ
ヴァトーの絵画から
うつろな道化師と「存在するもの」
ロンドあるいは差異の反復
恍惚とするサリエリ
物を無益に消費する社会から有益に蓄積し使用する社会へ
過渡期の人として
もう一つの脱自の場面
近代と二つの悪
『レクイエム』、その言葉と音楽
「第二の死」に新たな生の可能性を見るフランス現代思想
音声の飛翔――発話、演劇、オペラ
モーツァルトが分かる?

第2章 パロディを愛するモーツァルト
パロディを好む天才
二五歳の決断
クラヴィーアの国へ
今のご時世は関節が外れている
「至高性」は「なにでもない」魅力
バタイユと音楽
芸術作品と至高性
バタイユの至高性は「国家の主権」でも「個人の自立」でもない
封建制は至高性を視覚的イメージに限定した特権階級と民衆の共同責任からなる
共産主義の倫理的影響
戦後の西欧社会の状況
封建制下の因習
「至高の人」
ピアノ協奏曲とともに新たな世界へ
開花
至高のアンダンテ
再び洞窟へ
至高のメディアのために

第3章 オペラ『ドン・ジョヴァンニ』とバタイユ
一七八七年一〇月、プラハ
カサノヴァの異文から
不在の太陽――カサノヴァからキルケゴールへ
モーツァルトの太陽系
「聖なる陰謀」
聖なるものとは何か
生の大海、倫理の小島
反道徳を貫徹するドン・ジョヴァンニ
ニーチェは道徳を生きながら道徳と闘争した
生のどん底からモーツァルトを欲するニーチェ
トリノから

第4章 『魔笛』の夢
最後の散歩道
至高の夜の夢
にぎやかな劇場
誰が主人公なのか
シカネーダーの賭け
目を見張る舞台
空間を支配するか、空間と戯れるか
「夜の女王」の登場
『魔笛』の叡智
古代エジプト熱
フリーメイソンの壁のなかで
性差の壁
選別の壁
自然人の幸福
不幸なアウトサイダーのために
歓呼と沈黙
「バカの壁」
パパゲーノをもっとパパゲーノらしく
天才とは何か
物の時代こそ芸術を
最期のカフカへ
歌姫の追憶

終章 Take it easy!
涙もろい奴はダメなのか
すぐに泣くバタイユ
異化と脱自
涙は無の体験、幻視は無の光景
モーツァルトの涙
幻想曲の転調
軽さの美学
好運の音楽
もしも私に音楽の才能があったなら


あとがき
主要参考文献
索引

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[著者]酒井健(さかい・たけし)
1954年、東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、同大学大学院へ進学。パリ大学でジョルジュ・バタイユ論により博士号取得。現在、法政大学文学部教授。2000年に『ゴシックとは何か』でサントリー文学賞受賞。そのほかの著書に『バタイユ そのパトスとタナトス』(現代思潮新社)、『バタイユ入門』、『ロマネスクとは何か』(ちくま新書)、『バタイユ 聖性の探究者』(人文書院)、『バタイユ 魅惑する思想』(白水社)、『バタイユ』、『夜の哲学 バタイユから生の深淵へ』、『バタイユと芸術 アルテラシオンの思想』(いずれも青土社)、『シュルレアリスム 終わりなき革命』(中公新書)、『「魂」の思想史 近代の異端者とともに』(筑摩選書)、『絵画と現代思想』(新書館)、『死と生の遊び 縄文からクレーまで』(魅星出版)など。バタイユの訳書に『純然たる幸福』、『ランスの大聖堂』、『エロティシズム』、『ニーチェ覚書』(いずれも、ちくま学芸文庫)、『ヒロシマの人々の物語』、『魔法使いの弟子』、『太陽肛門』(いずれも、景文館書店)など。