絶滅へむかう鳥たち

-絡まり合う生命と喪失の物語-

トム・ヴァン・ドゥーレン 著,西尾義人 訳

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絶滅へむかう鳥たち

定価2,640円(本体2,400円)

発売日2023年2月14日

ISBN978-4-7917-7533-0

一つの種が絶滅するとはどういうことか。
ダナ・ハラウェイ氏、マーク・ベコフ氏推薦。
絶滅とはある特定の種の最後の一個体が死ぬことを意味するのではない。絶滅はそのはるか前からなだらかに、しかし着実にはじまっているのだ。絶滅の過程にいる種と人間はいかなる関係が結べるのか。消えゆく種に配慮するとはどういうことか。絶滅の過程で人間が負いうる義務とは何か。すでに多くのことが語られてきた絶滅をめぐる問題を、絶滅にむかう五種の鳥たちの生から問い直す。解説・近藤祉秋

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[目次]

謝辞


はじめに 「絶滅の縁」でいきいきと物語を語ること
絶滅の時代に分け入って 絶滅の物語をいきいきと語ること 絶滅の縁 本書の構成


第1章 アホウドリの巣立ち――空の飛び方と無駄にされた世代
海をさすらう 空の飛び方 無駄にされた世代 絶滅への飛行経路 絡まり合った空の飛び方


第2章 旋回するハゲワシ――「絶滅のなだらかな縁」における生と死
生と死のあわい(ハゲワシは時にそこにいる) 絡まり合った「生成/なること」 近接性と「二重の死」


第3章 都会のペンギンたち――失われた場所の物語
動物界における「物語られる場」 ペンギン、物語、場所 愛された場所、失われた場所 匿われる世代


第4章 ツルを育てる――飼育下生活の暴力的-ケア
野生を離れて――飼育下繁殖プログラムの誕生 繁殖と渡り――刷り込みの問題と約束 刷り込みの倫理――強制と飼育 代行者、犠牲、種の思考 暴力的-ケア――なだらかな縁で希望をつむぐ


第5章 死を悼むカラス――共有された世界における悲嘆
死と人間例外主義 カラスと付き合う――悲嘆の進化 共有された世界の学び直しとしての悼み 絶滅の時代における「物語られる死の悼み」


エピローグ 物語の必要性


解説 死にゆく鳥たちと私たちのビオス(近藤祉秋)

参考文献・索引

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[著者]トム・ヴァン・ドゥーレン Thom van Dooren
1980年生まれ。シドニー大学人文学部准教授。環境哲学者。とりわけ、種の絶滅や絶滅の危機に瀕している種と人間の絡まり合いの中で生じる哲学的、倫理的、文化的、政治的問題に焦点を当てて研究をしている。単著に、A World in a Shell(MIT Press, 2022)、The Wake of Crows: Living and Dying in Shared Worlds(Columbia University Press, 2019)などがある。エリザベス・デローリー、デボラ・バード・ローズと共に学術誌Environmental Humanities (Duke University Press)の創刊と編集に携わっている。


[訳者]西尾義人(にしお・よしひと)
1973年東京生まれ。翻訳者。国際基督教大学教養学部語学科卒業。訳書にピーター・J・ファイベルマン『博士号だけでは不十分!』(白楊社)、ウォルター・R・チンケル『アリたちの美しい建築』(青土社)などがある。


[解説者]近藤祉秋(こんどうしあき)
専門は文化人類学、アラスカ先住民研究。著書に『犬に話しかけてはいけない――内陸アラスカのマルチスピーシーズ民族誌』(慶應義塾大学出版会)。編著に『食う、食われる、食いあう マルチスピーシーズ民族誌の思考』(青土社)などがある。