国境産業複合体

-アメリカと「国境の壁」をめぐるボーダースタディーズ-

川久保文紀 著

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国境産業複合体

定価2,860円(本体2,600円)

発売日2023年3月23日

ISBN978-4-7917-7540-8

国境を守るのは誰か? 国境から締め出されるのは誰か?
国境はもはや、国家と国家の間を区切るただの線ではない。監視技術やバイオメトリクスを駆使して、われわれの身体に刻まれるシステムと化している。国家とグローバル企業が手に手を取り合う、新たな国境政治のかたちとは何か。生活空間としての国境で展開される、新たなコミュニティ運営の可能性とは何か。航空産業、ITコンサル、軍需産業などを巻き込み展開される、国境政策の最前線。

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[目次]

略語一覧

はじめに

序章 9・11テロ以後の国境ガバナンスの変貌
はじめに
1 北米国境をめぐる研究動向
2 国境管理におけるパラダイム・チェンジ
3 本書の構成

第1章 境界研究の新しい地平
はじめに
1 境界研究とは何か――国境を捉える新しい視角
2 内部(インサイド)/外部(アウトサイド)を超えて
3 境界化の理論的枠組み
おわりに

第2章 ホームランド・セキュリティと米国
はじめに
1 ホームランドとは何か
2 セキュリティの変容
3 ホームランド・セキュリティと国境管理
おわりに

第3章 米墨・米加国境の変貌――トランプの壁と「国境」の拡大
はじめに
1 米墨国境の軍事化
2 トランプの壁の構造と実態
3 「一〇〇マイル国境ゾーン」――レイシズムと国境化するホームランド
4 南北国境のシンクロナイズ――米加国境の「米墨国境化」
おわりに

第4章 国境産業複合体――セキュリティの担い手たち
はじめに
1 歴史的展開
2 主要企業の動向
3 三位一体の構造
おわりに

第5章 移民勾留の国境政治
はじめに
1 ホームランド・セキュリティと移民・税関捜査局(ICE)
2 移民の犯罪者化
3 「産獄複合体」から「移民産業複合体」へ
おわりに

第6章 生政治国境の生成
はじめに
1 リスク管理としての監視
2 モビリティと生政治国境
3 空港―監視とセキュリティの場
4 航空保安――「ターゲット・ガバナンス」と「リスクガバナンス」
おわりに

第7章 北米国境ガバナンスの苦悩
はじめに
1 北米地域統合の軌跡
2 スマート・ボーダーと米加・米墨関係
3 北米の安全と繁栄のためのパートナーシップ(SPP)
4 「セキュリティ・ペリメーター」と北米共同体構想 
おわりに

第8章 ローカル・イニシアティブ――国境地域からの挑戦
はじめに
1 ケーススタディとしてのサンディエゴ・ティファナ地域
2 「脱境界化」と「再境界化」の攻防
3 下からの国境ガバナンスを求めて――クロスボーダー・ガバナンス
おわりに

終章 二一世紀の国境ガバナンスに向けて
はじめに
1 新型コロナウイルスと国境
2 「壁の帝国」としての米国――バイデンの壁
3 二一世紀の国境ガバナンス
おわりに

あとがき
参考文献

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[著者]川久保文紀(かわくぼ・ふみのり)
1973年福島県生まれ。専門は、現代政治学、国際関係論、境界研究。中央大学大学院法学研究科博士後期課程政治学専攻単位取得満期退学。博士(政治学)。現在、中央学院大学副学長・法学部教授。共著に星野智編『アントロポセン時代の国際関係』(中央大学出版部、2022年)、訳書にアレクサンダー・C・ディーナー+ジョシュア・ヘーガン『境界から世界を見る――ボーダースタディーズ入門』(岩波書店、2015年)など。