ユリイカ2023年6月号 特集=A24とアメリカ映画の現在

-『ムーンライト』『ミッドサマー』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』、そして『aftersun/アフターサン』へ-

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ユリイカ2023年6月号 特集=A24とアメリカ映画の現在

定価1,760円(本体1,600円)

発売日2023年5月29日

ISBN978-4-7917-0432-3

ヴェールに覆われた眼差しが見つめる「ヴィジョン」
およそ10年前に設立されて以来、独自の存在感を放ち続けているA24。作品の「ヴィジョン」の精査に基づくキュレーション、ソーシャルメディアを活用した独創的なマーケティング、そしてそれらを「A24」らしさとして印象づけるブランディングは、いまやZ世代をはじめとする広範な層にリーチし、個々の作品の枠組みを越えたファンダムを形成しているように見える。第95回アカデミー賞で11部門にノミネートされ、作品賞・監督賞をはじめとする7部門を受賞したことにより大きな注目を集めた『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2023年)をはじめ、多くの作品を送り出してきた A24が見据える「ヴィジョン」は文字通り幻であるのか、あるいは「アメリカ映画」の未来を開拓する賭けとなり得るのか、今こそ見極めたい。

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特集*A24とアメリカ映画の現在──『ムーンライト』『ミッドサマー』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』、そして『aftersun/アフターサン』へ


❖メールインタビュー
余白の前で / シャーロット・ウェルズ 聞き手=編集部

❖一〇年と、さらに前
A24が体現する制度・空間・主体像 / 渡邉大輔
アメリカの独立系映画スタジオが「映画」を挑発し続けた一〇年──主にA24とアンナプルナ・ピクチャーズの作品群をめぐって / 上原輝樹
A24前夜──アメリカン・インディについて私が知っている二、三の事柄 / 川口敦子

❖未知への跳躍
マキシマリズムの共鳴 / 池田学
一筋縄ではいかない創作性に富んだ未体験のフランス料理 / 石井勇一

❖ベーグルの穴の周縁にて
A24の「アメリカ映画」における東アジア系アメリカ人たち──『フェアウェル』『ミナリ』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 / 北村紗衣
A24の女たちとバース・ジャンプする / 児玉美月

❖座談会
拡散するムード、孤絶した家 / 南波克行×五所純子×上條葉月

❖分かれ道の先へ
A24とは / 小西啓介
アートハウスとポップコーン / 降矢聡


❖A24の「アメリカ」映画
西部劇への考古学的アプローチ──ケリー・ライカート『ファースト・カウ』が描く一八二〇年代のオレゴン / 原田麻衣
最高でも最悪でもない私たち──アメリカ女性映画史とA24 / 入倉友紀
傷を抱えて生き続ける──バリー・ジェンキンス論 / 上條葉月
自伝としての社会学──『ミッドナインティーズ』について / 大山エンリコイサム

❖回帰する過去
ものがたりのよみがえり / 三宅唱
さざなみと幽霊──すこしだけ場所でもあるわたしの記憶 / 金子由里奈

❖裂け目からのぞくもの
何が「ゴースト」と呼ばれているのか──デヴィッド・ロウリー『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』 / 須藤健太郎
速歩きのショーン・ベイカー論 / 宮本法明
アレックス・ガーランド──閉ざされた城の中で語る英吉利人 / 西田博至

❖対談
A24が送り出す恐怖とオルタナティヴポスターが出来るまで / 大島依提亜×ヒグチユウコ 司会=六本木 蔦屋書店映画コンシェルジュ

❖カラー口絵
A24へのオルタナティヴ・パースペクティヴ / 大島依提亜×ヒグチユウコ

❖拡散する不安
ホラージャンルの新たな地平──アリ・アスター作品が描く家族の恐怖と「救い」の物語 / 藤原萌
ホラーがケアを見つめる時──ローズ・グラス監督の『セイント・モード/狂信』を中心に / 石田由希
ヨルゴス・ランティモスの精密なぎこちなさ、あるいはランティモス作品の詩学的分析──フロンティアとしてのプレステージ・ホラー / 西川秀伸

❖資料
革新と包摂の狭間で──A24主要映画解題 / 冨塚亮平

❖忘れられぬ人々*20
故旧哀傷・小田久郎 / 中村稔 

❖物語を食べる*28
野蛮と憂愁に暮れなずんで / 赤坂憲雄 

❖詩
わたしは詩を書かない理由です / 和合亮一 

❖今月の作品
のもとしゅうへい・小川リ・小杉山立夏子・橋本圭 / 選=大崎清夏 

❖われ発見せり
未知の音をめぐるメモランダム / 小手川将

表紙・目次・扉=北岡誠吾