書評家人生

鹿島茂 著

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書評家人生

定価3,960円(本体3,600円)

発売日2023年8月21日

ISBN978-4-7917-7575-0

原稿用紙3枚半から浮かび上がる、
一冊の本、一人の人生。

旺盛な好奇心にもとづく幅広い選書と、本の隠れた可能性を引き出す手腕とで、読書家のあいだで根強い支持を集める書評家・鹿島茂。
当代随一の書評家は、なぜ書評を書き続け、いかにして書評家となったのか。
15年分の書評から一人の「知的飢餓者」の肖像が浮かび上がる。鹿島書評の集大成。

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[目次]

まえがき

2007
現代史のターニング・ポイントを再考 藤原書店編集部編『二・二六事件とは何だったのか』
Y染色体の危うい未来 ブライアン・サイクス『アダムの呪い』
「清潔」な男との交流と侠気 百瀬博教『裕次郎時代』
……

2008
経験の仕方、方法論を教えるものこそ 山崎正和『文明としての教育』
前衛芸術家の「交差点」に位置して マン・レイ『マン・レイ自伝』
バルザック世界へのもう一つの入口 オノレ・ド・バルザック『バルザック幻想・怪奇小説選集』全五巻
……

栞*1 『源氏物語』現代語訳読み比べ

2009
真夜中、無数の本たちに囲まれて アルベルト・マングェル『図書館 愛書家の楽園』
なぜ自家装丁文化が日本にないのか ジュゼップ・カンブラス『西洋製本図鑑』
官能的な肉体に宿った自省的知性 ドニ・ベルトレ『ポール・ヴァレリー』
……

2010
軟派のパリの先駆け 井田進也校注『幕末維新パリ見聞記』
人口の停滞期に坂本龍馬は現れない 速水融『歴史人口学研究』
助動詞「む」は「will」から類推せよ 小西甚一『古文の読解』
……

栞*2 埴谷雄高をいま読むために

2011
飽食と格差の都を描いた“予言”の書 エミール・ゾラ『パリ』上・下
社会学者の「自伝ならざる自伝」 ピエール・ブルデュー『自己分析』
疎外されつつ誠実に生きた「異邦人」 ヴィリジル・タナズ『カミュ』
……

2012
民主主義の功罪を予見した「若者」 髙山裕二『トクヴィルの憂鬱』
「集団の夢」を読み解く「社会美術史」 竹内幸絵『近代広告の誕生』
欧州宮廷が服従した「モード大臣」 ミシェル・サポリ『ローズ・ベルタン』
……

栞*3 丸谷才一、はじめの五冊

2013
「永遠の義務」を説いた根源的思想家 鈴木順子『シモーヌ・ヴェイユ』
現代を解読するための「予言の書」 エマニュエル・トッド『最後の転落』
伝統的社会の光と影を分析 ジャレド・ダイアモンド『昨日までの世界』上・下
……

2014
獄中生活がもたらした現代のパンセ 堀江貴文『ゼロ』
人間・机龍之助の新たな誕生 中里介山『大菩薩峠  都新聞版』第一巻
フランスの変化を家族類型で分析 エマニュエル・トッド、エルヴェ・ル・ブラーズ『不均衡という病』
……

栞*4 小説家のマエストロたち——中央公論文芸賞選評

2015
芸術を愛し、人々を明るくさせた王 ルネ・ゲルダン『フランソワ一世』
「植民地の経営」が重要な媒介項に 佐谷眞木人『民俗学・台湾・国際連盟』
街の魅力をかたちづくる「多層性」 ドミニク・レスブロ『街角の遺物・遺構から見たパリ歴史図鑑
……

2016
実態は差異主義的な「ネオ共和主義」 エマニュエル・トッド『シャルリとは誰か?』
最大の疑問が解かれる日は来るか 海部陽介『日本人はどこから来たのか?』
大地震が日本人の特性を変える? 五味文彦『中世社会のはじまり』
……

栞*5 漫画美学入門  その1

2017
文学や映画を深く味わうために 村上リコ『図説英国社交界ガイド』
伝説の酒も戦争の犠牲に バーナビー・コンラッド三世『アブサンの文化史』
「劇的なる精神」の自伝 山崎正和『舞台をまわす、舞台がまわる』
……

2018
娘を股裂き状態にする母の要求 信田さよ子『母・娘・祖母が共存するために』
考え方の「型」を学ぶことは可能だ 坂本尚志『バカロレア幸福論』
科学的で合理的な「考え方」を伝授 マルク・ブロック『比較史の方法』
……

栞*6 漫画美学入門 その2

2019
『パサージュ論』の企てをプラハで再演 デレク・セイヤー『プラハ、二〇世紀の首都』
理性と非理性を同じ「枠組み」で理解 大野英士『オカルティズム』
出版・書籍流通の「未来研究」 橋口侯之介『江戸の古本屋』
……

2020
国家レベルで滅亡の危機を回避せよ ジャレド・ダイアモンド『危機と人類』上・下
古書店主六十人の人生を収集 青木正美『古書と生きた人生曼陀羅図』
良心を奪う民営化という名の搾取 シェーン・バウアー『アメリカン・プリズン』
……

栞*7 漫画美学入門 その3

2021
「誤配」から生まれる批評的観客 東浩紀『ゲンロン戦記』
マイナス要因もまた歴史を動かす ミシェル・カルモナ『マリ・ド・メディシス』
フェイク文学の金字塔 ジョージ・サルマナザール『フォルモサ 台湾と日本の地理歴史』
……

2022
空白の二百年」の謎を解く琥珀 佐藤彰一『フランク史』1
健康改善の真の要因を探る 久繁哲徳『図解医療の世界史』
官僚とリベンジ組の新天地 平山周吉『満洲国グランドホテル』
……

栞*8 学術書の奥深き世界——サントリー学芸賞選評

2023
謎多き古代文字、英仏の天才が挑む エドワード・ドルニック『ヒエログリフを解け』 
芸能都市・東京での青春回想記 矢野誠一『芝居のある風景』 
運命的な出会いが生んだ「革命」 阿部卓也『杉浦康平と写植の時代』 
……

栞*9 『力と交換様式』精読——霊の力はどこから来るのか

 

あとがき 

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[著者]鹿島茂(かしま しげる
1949年、神奈川県横浜市生まれ。作家、フランス文学者。明治大学名誉教授。専門は19世紀フランス文学。『馬車が買いたい!』(白水社)でサントリー学芸賞、『子供より古書が大事と思いたい』(青土社)で講談社エッセイ賞、『愛書狂』(角川春樹事務所)でゲスナー賞、『職業別パリ風俗』(白水社)で読売文学賞、『成功する読書日記』(文藝春秋)で毎日書評賞を受賞。その他、著書多数。書評アーカイブサイト「ALL REVIEWS」主宰。2022年、神保町すずらん通りに共同書店「PASSAGE」を開店。