大統領の精神分析

-フロイト幻の著作『ウィルソン』の真実-

パトリック・ヴェイユ 著,大嶋厚 訳

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大統領の精神分析

定価3,960円(本体3,600円)

発売日2024年7月11日

ISBN978-4-7917-7644-3

一冊の本から浮かび上がる、知られざる政治史
米大統領の行動を心理学的に分析したフロイトの問題作『ウィルソン』。その刊行を画策し、また30年以上にわたる刊行の延期の原因ともなったのは、国際情勢の裏側で暗躍する、あるひとりの外交官だった——。時代と切り結んだ外交官と分析家の真の意図を、新たに発見された原本を含む膨大な史料をもとに甦らせる。

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[目次]

第1章 ヴェルサイユ条約での米国の敗北
上院が期待していた新事実
国務長官の告白
ウィルソン大統領の脳卒中
狂気の境界線上のウィルソン
打ち砕かれた機械

第2章 単独行動者の第一歩
中欧の帝国で、記者として
講和を準備する
ベルンとモスクワ
失望
孤立

第3章 パリとウィーンのアメリカ人
ルイーズ・ブライアントとの新生活
フロイトのカウチで
病と離婚

第4章 なぜフロイトはブリットの提案を受け入れたのか

第5章 ヴェルサイユ条約を理解し、ハウス大佐の資料を閲覧すること

第6章 プリンストンの亡霊
南部での青春時代
栄光から拒絶へ——失敗だった学長時代

第7章 世界の舞台での「繰り返し」
世界の頂点へ
パリでの大失敗

第8章 フロイトとともにウィルソンを精神分析する
新事実
父への固着

第9章 ローズヴェルトに認められて
居場所をつかむ
大統領に従って

第10章 一九三三年——初代駐ソ米大使  スターリンを知るために
短い蜜月時代
スターリン主義の過酷さから逃れる

第11章 フランス大使として——ヨーロッパの平和を守るために
最後まで、仏独和解を
フロイトを救出する
戦争回避のために、フランスを支援する

第12章 ミュンヘン以後——フランスの軍備増強と米国の戦争準備
ローズヴェルトの確信——航空機が決定打となる
パリを保護し、ヴィシーを吟味する

第13章 奇妙な戦争
カピトリヌスの丘からタルペイアの岩へ
フレンチ・コネクション
情勢を一変させたバルバロッサ作戦

第14章 世界大戦のさなかで
ヒトラーを敗北させ、スターリンを停止させる
ブリット、冷戦を開始す
ドゴールとともに

第15章 冷戦の中で
ベトナムでの成功、中国での失敗
汝平和を欲さば、戦の備えをせよ
ニクソンとともに
パリに隠棲して

第16章 『ウィルソン』ついに出版される
後継者たちとの闘い

第17章 父の帰還

第18章 明らかにできなかった秘密
受動的同性愛とキリスト教

第19章 ウィルソン——フロイトとブリットを超えて
残酷で屈辱を与える父親
スマッツと一九一九年三月の落胆

結論


謝辞
訳者あとがき
原注
略号一覧
アーカイヴ
人名索引

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[著者]パトリック・ヴェイユ(Patrick・Weil)
1956年生まれ。政治学博士。フランス国立科学研究センター(CNRS)研究主任(パンテオン・ソルボンヌ大学(パリ第1大学)現代世界社会史研究所所属)。イエール大学客員教授。他の邦訳に『フランス人とは何か——国籍をめぐる包摂と排除のポリティクス』(明石書店、2019年)がある。

[訳者]大嶋厚(おおしま・あつし)
1955年生まれ。翻訳者。上智大学大学院博士前期課程修了。元パリ日本文化会館副館長。訳書にパトリック・ヴェイユ『フランス人とは何か』(共訳、明石書店、2019年)、グレゴワール・コフマン『オテル・ド・ブルターニュ』(吉田書店、2022年)、ミシェル・ヴィノック『クレマンソー』(作品社、2023年)など。