記憶に残る日本語

-文豪一二四人の名言・名文-

中村明 著

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記憶に残る日本語

定価3,080円(本体2,800円)

発売日2024年5月27日

ISBN978-4-7917-7646-7

夏目漱石、樋口一葉、志賀直哉、谷崎潤一郎、里見弴、岡本かの子、芥川龍之介、井伏鱒二、中谷宇吉郎、梶井基次郎、小津安二郎、幸田文、坂口安吾、中島敦、太宰治、吉田健一、山田風太郎、三島由紀夫、丸谷才一、大岡信、谷川俊太郎、井上ひさし、大江健三郎、川上弘美、小川洋子、三浦しをん……作家たちによる日本語表現の極意。

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[目次]

心の底を叩いて見るとどこか悲しい音がする
森鷗外/夏目漱石/幸田露伴/島村抱月/高山樗牛/国木田独歩/徳田秋声

千七、八百年前に同時に型を脱し、同時に窯を出て、同じ墓壁に 
島崎藤村/樋口一葉/柳田国男/寺田寅彦/永井荷風/正宗白鳥/会津八一

宵闇に浮かぶ白い浴衣も、おぼつかない白粉の匂いも 
斎藤茂吉/志賀直哉/岩本素白/高村光太郎/佐々木邦/荻原井泉水/小宮豊隆

桐の花の色もちらつかせ、カステラの手ざわりも匂わせたい 
武者小路実篤/中勘助/北原白秋/谷崎潤一郎

首だけが、ひとりでに高く登って行く様な気持ち 
里見弴/内田百閒/久保田万太郎

うれしさ、恥ずかしさのやり場はこれ以外になかった 
室生犀星/岡本かの子/坪田譲治/日夏耿之介/宇野浩二/広津和郎

秋の雨自らも、遠くへ行く寂しい旅人のように 
堀口大學/芥川龍之介/佐藤春夫/瀧井孝作/福原麟太郎/高田保/井伏鱒二/横光利一

老年の凍りつくようななさけなく 
川端康成/尾崎一雄/石川淳/網野菊/中谷宇吉郎/時枝誠記

桜の樹の下には屍体が埋まっている 
梶井基次郎/稲垣達郎/小林秀雄/上林暁

風鈴の音がその日いちにちの終りをセンチメンタルに結ぶ 
森茉莉/サトウハチロー/小津安二郎

五彩の花々は絶間なく空を染め、絶間なく空に吸込まれた 
木山捷平/永井龍男/幸田文/堀辰雄/伊藤整/波多野完治

薄鈍びて空に群立つ雲の層が増して
円地文子/平林たい子/坂口安吾/朝永振一郎/井上靖

浅草の路地の朝は、味噌汁のかおりで明けた 
藤枝静男/湯川秀樹/沢村貞子/大岡昇平/花田清輝/中島敦

永劫であろうとするような光の顫動が音響をすら放って 
太宰治/松本清張/小山清/田宮虎彦/森敦

夕日が波紋のような最後の光を放っている中へ五つの影が
吉田健一/小島信夫/串田孫一/島尾敏雄/福永武彦

貝がらを耳に当てると海の音が聞えるの 
小沼丹/安岡章太郎/庄野潤三/山田風太郎/清岡卓行/遠藤周作

街燈に照らされた雨が、物思いにふける主人公の姿を映す 
吉行淳之介/三島由紀夫/丸谷才一/辻邦生/吉村昭/北杜夫/小川国夫

胸の中にほんの少し不逞な気分が入りこんできた 
藤沢周平/竹西寛子/向田邦子/青木玉/大岡信

お前の舌/お前の眼/お前の昼寝姿が/今はっきりと 
谷川俊太郎/三浦哲郎/後藤明生/黒井千次

思いつめた目をした中年男が冷たく光る鋭利な刃物を
久保田淳/大村彦次郎/阿部昭/井上ひさし

やがてだれもいなくなった庭だけが残った 
大江健三郎/富岡多恵子/三木卓/古井由吉/池澤夏樹

彼女自身の心みたいに暗い森の奥で 
宮本輝/村上春樹/森まゆみ/川上弘美

マッシュされたじゃがいもに長靴の底の模様が残る 
小川洋子/俵万智/角田光代

まさに辞書の鬼で、鞄は「どす黒い情念の塊」 
江國香織/笹原宏之/柳美里/三浦しをん

あとがき 

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[著者] 中村明(なかむら・あきら)
1935年山形県鶴岡市生まれ。早稲田大学名誉教授。主著に『日本語文体論』『日本語 語感の辞典』『日本の作家 名表現辞典』『日本語 笑いの技法辞典』(岩波書店)、『日本語のおかしみ』『美しい日本語』『日本語の作法』『五感にひびく日本語』『日本語の勘』『日本語名言紀行』『日本語人生百景』『心にしみる日本語』(青土社)がある。