辺境のラッパーたち

-立ち上がる「声の民族誌」-

島村一平 編 著

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辺境のラッパーたち

定価3,520円(本体3,200円)

発売日2024年6月26日

ISBN978-4-7917-7654-2

ラッパーのことばに耳をすませば、世界のリアルが見えてくる。
戦火が絶えないガザやウクライナで、弾圧が続くチベットやイランで、格差にあえぐモンゴルやインドで、海の端の日本で――。アメリカで生まれたヒップホップ文化、なかでもラップミュージックは世界に広がり、「辺境」に生きる者たちは声なき声をリリックに託す。現代社会の歪みを鮮やかに映し出す、世界各地のラッパーたちの声がここに。ダースレイダー、HUNGER(GAGLE)のインタビューも収録。

 

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[目次]

はじめに 辺境ヒップホップ論――結びつく周縁から辺境のノイズへ / 島村一平


第1部 非常事態下のラッパーたち


パレスチナ
パレスチナ・ガザに響くラップ / 山本薫

ウクライナ
抵抗歌としてのウクライナ民謡とヒップホップ――マイダン革命から対ロシア戦争へ / 赤尾光春

ロシア
「亡命」するラッパーたち――二〇二〇年代の「文学裁判」とウクライナ戦争 / 中野幸男

チベット
土地・記憶・言語を行き来するラップ――チベッタン・ディアスポラのヒップホップ / 佐藤剛裕


第2部 言論統制下のラッパーたち


中国
模索される「中国の特色あるヒップホップ」 / 奈良雅史

イラン
内在的社会批判のアポリア――イラン・ペルシア語ラップの軌跡 / 谷憲一

キューバ
キューバのヒップホップ――アフロキューバ・ラップからトランスボーダー・ラップへ / 安保寛尚

Interlude
Back in the 1997 to 99――極私的ヒップホップ・メモワール / ダースレイダー


第3部 主張するマイノリティ


タタールスタン
祖なるビートに呼応せよ!――グローバル化時代のタタール・ヒップホップとしたたかな抵抗 / 櫻間瑞希

サハ
極北の国サハの口琴とラップ / 石原三静 a.k.a.ヌマバラ山ポール

アラスカ
抵抗とケア――アラスカのネイティブ・ラッパーAKレベル / 野口泰弥


第4部 伝統文化をラップの武器に


ポーランド
先駆者ラッパーと振り返るポーランド・ヒップホップ / 平井ナタリア恵美

モンゴル
共起するナショナリズムと社会批判――モンゴル・ラッパーたちの二重意識 / 島村一平

インド
成り上がり・フロム・ガリー――How To Be BIG in India / 軽刈田 凡平


Interlude
「外」から「内」へ――町と、日本と出会いなおす旅 / HUNGER(GAGLE) 聞き手=矢野原佑史


第5部 混淆する文化の中で


インドネシア
リッチ・ブライアンを超えろ / 金悠進

ブラジル
辺境どころかヒップホップ超大国のブラジル / 中原仁

プエルトリコ
抵抗と絡み合うルーツ――「最古の植民地」プエルトリコ / 村本茜

 

おわりに / 島村一平

 

執筆者略歴

 

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[編者]島村一平(しまむら・いっぺい)

国立民族学博物館人類文明誌研究部教授。文化人類学・モンゴル研究専攻。博士(文学)。早稲田大学法学部卒業後、テレビ番組制作会社に就職。取材で訪れたモンゴルに魅せられ制作会社を退社、モンゴルへ留学する。モンゴル国立大学大学院修士課程修了(民族学専攻)。日本に帰国後、総合研究大学院大学博士後期課程に入学。同大学院を単位取得退学後、国立民族学博物館講師(研究機関研究員)、滋賀県立大学人間文化学部准教授等を経て現職。著書に『憑依と抵抗——現代モンゴルにおける宗教とナショナリズム』(晶文社)、『ヒップホップ・モンゴリア——韻がつむぐ人類学』(青土社)、『増殖するシャーマン——モンゴル・ブリヤートのシャーマニズムとエスニシティ』(春風社)など多数。