定価4,950円(本体4,500円)
発売日2023年10月26日
ISBN978-4-7917-7568-2
太古の人びとのまなざしと美術の起源をめぐって
鮮やかな色彩で生き生きと描かれた動物たち、意味ありげな幾何学図形、壁面を埋め尽くす手形……。はるか昔の人びとが描いた痕跡が世界各地に残っている。これらを描いた人たちはだれで、いつ、どのようにして描いたのか。そもそもいったい何のために暗い洞窟の奥に描いたのか。実際にフランスやスペインの遺跡におもむき、研究を続けてきた著者が満を持してあらわした洞窟壁画の世界、そのすべて。

[目次]
はじめに
第Ⅰ部 洞窟に何を描いたのか――描かれたモチーフの分類
第1章 氷期に絶滅した動物――ケナガマンモス、ホラアナライオン、ケサイ、ホラアナグマ、オオツノジカ
第2章 歴史時代に絶滅した動物や現存する動物――ウマ、バイソン、オーロックス、トナカイ、シカ、アイベックス
第3章 人間らしき画像、半獣半人像、混成動物像
第4章 手形
第5章 記号――幾何学図形
まとめ
コラム1 旧石器時代と中石器時代、新石器時代の美術の主題やモチーフのあつかい
第Ⅱ部 どうやって壁画を描いたのか――壁画の技法と制作のための下準備
第1章 彩色論
第2章 線刻画
第3章 彫刻――浮き彫り、彫塑
第4章 絵具の準備
第5章 ハシゴや足場、ランプ、顔料の調達
まとめ
コラム2 ポワッソン岩陰遺跡のサケの浮き彫り切り出し未遂事件
第Ⅲ部 なぜ洞窟に壁画を描いたのか――洞窟壁画の制作動機や目的に関する仮説やアプローチ
第1章 遊戯説――「芸術のための芸術」、ホモ・ルーデンス
第2章 呪術説
第3章 トーテミズム
第4章 シャーマニズム
第5章 構造主義的研究――画像配置分析に基づく二項対立的な神話を中心に
まとめ
コラム3 「美術の起源」はいかに考えられてきたか
第Ⅳ部 いつ壁画を描いたのか――壁画の年代を特定する方法
第1章 遺物包含層と壁画との相関関係
第2章 ブルイユによる二周期の様式論
第3章 ルロワ=グーランによる直線的な様式展開
第4章 放射性炭素年代測定法――黒い壁画に使われた炭の年代
第5章 ウラン系列法――壁画を覆う方解石の年代
まとめ
コラム4 最初に発見された旧石器時代洞窟壁画――アルタミラの天井画が公認されるまで
コラム5 動産美術を通してみる遺跡間の関係――生産地と消費地
第Ⅴ部 どこに壁画が残っているのか――壁画のありか
第1章 ヨーロッパ後期旧石器時代洞窟壁画遺跡の分布
第2章 洞窟、岩陰、野外
まとめ
コラム6 洞窟壁画遺跡の保存、管理、公開――モノから推測するヒト
第1章 装身具の役割――素材入朱や考古学的コンテクストから読み取れるヒト
第2章 ヨーロッパに広まった女性表現
第3章 ホモ・サピエンスの現代人的行動――初期人類が残したモノから探る、形や色への興味から美術を制作するまで
第4章 ホモ・サピエンスならではの特徴とは――霊長類、初期人類との違いから
まとめ
おわりに
あとがき
注
図版クレジット
文献表

[著者]五十嵐ジャンヌ(いがらし・じゃんぬ)
1968年千葉県生まれ。東京藝術大学美術学部卒業、大阪大学大学院文学研究科修了後、フランス国立自然史博物館にて博士号(先史学)を取得。先史学博士。2016~2017年に東京、宮城、福岡で開催された「世界遺産ラスコー展」の学術協力者。東京藝術大学、慶應義塾大学、立教大学、実践女子大学、文化学園大学の非常勤講師。著書に『なんで洞窟に壁画を描いたの?――美術のはじまりを探る旅』(新泉社、2021年)。共著に、『世界遺産ラスコー展』(海部陽介、五十嵐ジャンヌ、佐野勝宏ほか、毎日新聞社、TBSテレビ、2016年)、『夢みるヒトのクロスロード――芸術と記憶の場所』(港千尋編、平凡社、2016年)がある。