定価2,200円(本体2,000円)
発売日2024年2月24日
ISBN978-4-7917-7617-7
理論と臨床から考える「援助」論
臨床の現場にたち、第一線で活躍しつづけている著者。時代の移り変わりや社会のできごとを経ていくなかで、「家族」や「こころ」が静かにしかし確かに変化していくさまを見つづけてきた。依存症、ヤングケアラー、アダルト・チルドレン、DV、母と娘、そして精神医療の現在……。変わりゆくように見える「家族」や「こころ」に手を伸ばすとき、どのようなあたらしい生存戦略がありうるのか。医療とは異なる「援助」は可能なのか。第一人者による思索と実践の記録。
「目の前に存在する人たちの具体的で生々しい言葉や経験が、どのように家族の歴史や権力・社会と切り結んでいるのか。そのような問題意識がカウンセラーである私を支えてきた。この職業を選んでほんとうによかったと思うのは、小さなヒントや回答の光が見えた時である。」(本文より)

まえがき
聴く、見つめる、手を伸ばす
訪れる痛みと与える痛み
はじめに/心は痛むか?/心身二元論的倫理を超える/ジェンダーと痛み/被害と痛み/暴力の非文脈性と痛みによる文脈化/過去から訪れる痛み/痛みと承認/痛みを与える/否定される痛み/おわりに
なかったかのように
はじめに/声をひそめて/原発事故避難者たち/記念日反応/下方比較の国/家族像の慣性と副産物/否認の罪/いっしょに渡る赤信号/おわりに
ギャンブル障害と家族の支援
はじめに/アディクションアプローチ/「底つき」への誤解とその意味/典型的な事例/家族への心理教育とグループカウンセリング/司法との連携/自助グループ/おわりに
家族の暴力における「秘密と嘘」
はじめに/裁く言葉としての「嘘」/透明な存在/秘密をつくるリスク/親のことを秘密にする子どもたち(アダルト・チルドレン)/見ない、聞かない、語らない/性虐待被害者とのカウンセリング/おわりに
『息もできない』――国家の暴力・家族の暴力
一組の男女/増加する面前DVという心理的虐待/子どもに与える影響/影響のジェンダー差/戦争とDV・虐待/責任のとり方
ヤングケアラーとアダルト・チルドレン
はじめに/ACという言葉の誕生とアルコール依存症/沈黙していた「子ども」たちへの注目/ACの定義とYCの定義/なぜ親をケアし支えるのか/母を支えることで生きる/YCと親との関係/グループの可能性/安全性と儀式性/おわりに
家族とは何か
「生存戦略」としての依存症
依存症と被害経験/近代家族の典型として/力とケアと責任/力=依存症/ケア=共依存/責任=アダルト・チルドレン(AC)/それは自覚されるのだろうか/おわりに
自分自身が抱える問題で精いっぱいの親たち
はじめに/四つのタイプ/両極端の関心/子どもに与える影響/他者性というキーワード
丸山豊『月白の道』――オロオロ歩きながらトラウマについて考える
ひとつの出会い/理由のわからない死/トラウマと戦争/四四年の歳月/詩と連続性/オロオロ歩く
「家族の暴力」はなぜ繰り返されるのか
――〝閉ざされた空間〟に潜む病理に、専門家が提示する克服への処方箋
家族の中の暴力は同時多発的/なぜ加害者は暴力に走るのか/閉じた空間で歪む家族の価値観/ワンストップの相談窓口の整備を!
家庭内暴力の構造を考える
はじめに/家庭に暴力など存在しない点/起源をたどる/二つの虐待死事件とDV/フェミニズムとヒューマニズム/正義をめぐる暴力/DV被害者への誤解/妻を支配するための洗脳/DV被害者支援とは」/構造的暴力とジェンダー/おわりに
〈援助〉という思想
グローバル化する精神医療――辺境から眺める
飲酒リスクの低減/無敵の言葉「健康」/加害者を「治療」する?/司法と精神医療の相互乗り入れ/健康ファシズム/包摂か排除か/汎化する精神医療
精神医療からの逃走
影の構造としての自助グループ/エクスメド/波に呑み込まれないために/アディクションにおける専門家の逆襲と医療化/脱施設化が医療に呑み込まれれる/不在の当事者をめぐって/これからの資格/やはり逃げ続けよう
突然頭痛に襲われた――『チチカット・フォーリーズ』について
DV被害プログラムの実戦経験から
はじめに/暴力という言葉の誕生/暴力という三つの位相/公的暴力と私的暴力の密約・共謀/フォレンジックなアプローチ/アディクションとフェミニズム/DVの包括的援助/医療と司法のはざまにある被害/被害者の告発によってDV加害者という定義が立ち上がる/被害者意識に満ちたDV加害者/加害者トラウマと司法モデル/加害者の記憶、被害の記憶/責任をとること/加害者臨床/おわりに
「未完の家族」と摂食障害
摂食障害との出会い/ひとりの女性のこと/身体という主戦場/表紙を飾った三枚の絵/おわりに
あとがき
初出一覧

[著者]信田さよ子(のぶた・さよこ)
1946年岐阜県生まれ。公認心理師・臨床心理士、原宿カウンセリングセンター顧問、公益社団法人日本公認心理師協会会長。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。駒木野病院勤務、嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室長を経て、1995年原宿カウンセリングセンターを設立。アルコール依存症、摂食障害、ひきこもりに悩む人やその家族、ドメスティック・バイオレンス、児童虐待、性暴力、各種ハラスメントの加害者・被害者へのカウンセリングを行ってきた。著書に、『母が重くてたまらない』『さよなら、お母さん』『家族のゆくえは金しだい』(いずれも春秋社)、『カウンセラーは何を見ているか』(医学書院)、『依存症臨床論』(青土社)、『アダルト・チルドレン』(学芸みらい社)、『家族と国家は共謀する』(角川新書)、『タフラブ 絆を手放す生き方』(dZERO)、『共依存』(朝日文庫)、『家族と厄災』(生きのびるブックス)などがある。