定価3,080円(本体2,800円)
発売日2025年12月25日
ISBN978-4-7917-7759-4
奇妙で重要な言い回しの正体
今日の夕飯は何を食べるべきか、目の前の他者を助けるべきか、どの職業を選ぶべきか――。
大小を問わず私たちは日々「べき」という指針に基づき無数の選択をしながら生きている。
「べき」という言葉によって表されているものは一体何か。
私たちの生を貫いている言葉の核をていねいに解きほぐす、気鋭による入門書。

[目次]
序論 私たちは事実だけでは生きられない
1章 どうするべきか、それが問題だ――「べき」の大事さと難しさ
1節 「べき」と選択
2節 「そうするべき」には理由がある
3節 内在主義と外在主義
4節 規範と「本物の」規範
2章 そうするべきか、それがどうした?――実践性と客観性のジレンマ
1節 準備作業
2節 幸福の哲学におけるジレンマ
3節 道徳の哲学におけるジレンマ
4節 ありえる解決策
3章 「べき」に手を焼く哲学者たち――ジレンマの既存の解決策と、その批判
1節 磁力説とマッキー
2節 寛容説とマクダウェル
3節 構成主義とコースガード
4章 「べき」は事実か、それとも意見か――表出主義から「べき」を分析する
1節 事実の描写vs.態度の表出
2節 動機づけに結びつく態度
3節 「べき−できる」原理から内在主義へ
4節 改めて内在主義テーゼを考える
5章 「なすべき」と「あるべき」――ジレンマを解消する
1節 その「べき」は誰の「べき」か
2節 二つの「べき」の表す態度
3節 内在主義と外在主義の調停
4節 これまでの議論とこれからの議論
6章 「べき」と責任――すべきことをしなかったら?
1節 なぜ責任を考えるのか
2節 責任が先か非難が先か
3節 避難とは何に対するどのような反応か
7章 人はどこまで責められるのか――二つの「べき」と二つの責任
1節 アモラリスト問題
2節 犠牲者、無邪気、異邦人
3節 問責可能性と帰属可能性
結論 すれ違い
注
あとがき
文献表
索引

[著者]鴻 浩介(びしゃご・こうすけ)
1986年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。現在、東京大学大学院人文社会系研究科教務補佐員、千葉工業大学ほか非常勤講師。専門は分析哲学、特にメタ倫理学と行為論。主な論文に、「理由の内在主義と外在主義」(『科学哲学』第49巻2号)、「道徳の批判者アンスコム」(『思想』第1181号)など。訳書にリサ・ボルトロッティ『現代哲学のキーコンセプト 非合理性』(岩波書店)がある。