「キャンセル・カルチャー」パニック

-パニックを生み出す言説空間-

アドリアン・ダウプ 著,藤崎剛人 訳

  • はてなブックマークに追加
  • LINEでシェア
  • Google+でシェア
「キャンセル・カルチャー」パニック

定価3,740円(本体3,400円)

発売日2025年12月26日

ISBN978-4-7917-7757-0

とある大学教員、トランプ、プーチン、ローマ教皇——。
「キャンセル」をめぐる物語は、いまやアメリカからヨーロッパ、そして世界中のさまざまな不安と結びつきながら肥大化している。「キャンセル・カルチャー」批判は、「ポリティカル・コレクトネス」批判の再来でありながらも、アテンション・エコノミーの力を借りつつますます広く拡散されている。この集団的熱狂に火をくべているものは何か——巨大化したバズワードを解体する。

line2.gif

[目次]

世界を徘徊する亡霊

序 章 モラル・パニックの輸出

第1章 キャンセル・カルチャーを語るとき、我々は何を語っているのか
定義やデータを扱う困難さ
「空気の変化」
キャンセル・カルチャー・パニックは誰のためのものか

第2章 言葉の歴史
ポリティカル・コレクトネス
コールアウト・カルチャーからキャンセル・カルチャーへ
パニック以前のキャンセル・カルチャー

第3章 想像上のキャンパス
アカデミーの木立
もうひとつのキャンパス・ノベル
六〇年代後半——ある種の節目

第4章 新保守主義(ネオコン)的視点
ブルームが創った世界
我々もまた新保守主義者なのだ

第5章 メロドラマへの意志
嘘の垂れ流し
スピーチ・コード
いわゆるフィクションと共に生きる権利

第6章 パニックの起こし方 「真実(アネクドート)」、定期購読、エッセイ
「真実(アネクドート)」
深刻(シリアス)さ
構造
定期購読 (サブスクリプション)
エッセイ

第7章 偏狭な国際主義 キャンセル・カルチャーはどのように輸入されたのか
イギリス
ドイツ
フランス

第8章 キャンセル・カルチャーの受容
キャンセルされた文化、キャンセルされた国——ロシア
ならず者たちのオンラインそしてオフライン——トルコ
力関係、歴史修正主義、キャンセル・カルチャーの物語

終 章 リベラリズムと反リベラリズム
こんな擁護者がいれば、反リベラルなんて必要ない
ヒエラルキー・専門知・制度 我らが異端の批評家は正統主義者である
アイデンティティ・ポリティクス
キャンセル・カルチャーと反リベラル・インターナショナル

謝辞

訳者解題
原注

line2.gif

[著者]アドリアン・ダウプ(Adrian Daub)

1980 年、ケルンで生まれる。アメリカのスワースモア大学卒業。ペンシルベニア大 学で博士号取得。現在は、スタンフォード大学で比較文学を教える。専門は 19 世紀のドイツ文学およびドイツの地域研究。ジェンダー問題を中心に社会的発信を行なっていることでも知られており、著書『シリコン・バレーは何を思考と呼ぶのか』(What Tech Calls Thinking, FSG Originals, 2020)は、ドイツ語をはじめ多くの言語に翻訳されて いる。

[訳者]藤崎剛人(ふじさき・まさと)

1982 年生まれ。カール・シュミットを中心とする公法思想史・政治思想史を研究。 『ニューズウィーク日本版』にコラムを連載。訳書にラインハルト・メーリング『カー ル・シュミット入門』(書肆心水、2022 年)、ローレンツ・イェーガー『ハーケンクロイツの文化史』(青土社、2022 年、共訳)がある。